■ 『天路の旅人 上 下』沢木耕太郎(新潮文庫2005年)を読み終えた。下巻は一気読み。本好きで良かったと思う。そうでなかったら、ボリュームのある本書を読むこともなく、八年間の信じられないほどの濃密な旅をした西川一三という人のことも知らなかっただろう。西川一三はラマ教の巡礼僧に扮した「密偵」。西川一三がどんな旅をしたのか、本書の記述から引く。**二十五歳のとき、日本ではラマ教といわれていたチベット仏教の蒙古人巡礼僧になりすまし、日本の勢力圏だった内蒙古を出発するや、当時の中華民国政府が支配する寧夏省を突破し、広大な青海省に足を踏み入れ、中国大陸の奥深くまで潜入した。しかも、第二次大戦が終結した…