幕臣・勝海舟 先日、龍馬が私に会いに来ました。そのときの様子を物語風に少しだけ話しましょう。 龍馬は、松平春嶽からの紹介状を懐に、門田為之助・近藤長次郎と連れ立って、赤坂氷川に住まいする幕府軍艦奉行並・勝海舟邸を訪れた。 龍馬たちが通された部屋は200畳はあろうかという大広間。部屋の中央には冷たくなった火鉢がひとつ、ぽつんと置かれているだけで座布団などはない。これが海舟一流のもてなし方だ。 「勝先生は何を考えちょるか。12月の寒い最中、まるで庭石にでも座っちょるかのようじゃき」と言いたかったが、寒さでうまく歯が噛み合わない。 そんなことにはお構いなしで海舟は話しだす。 「俺は30過ぎまで酒はい…