穏やかな気候だった。山が広がり、海が裂ける。 海が、広がっていった。山が裂けていく。 記憶はどこにあるんだろう。頭の中だろうか。それとも身体。 違う。場所じゃないか。目の前に起きていること、生まれたところ。 水が傾れ込んでくる。このままだと巻き込まれてしまう。普通なら逃げるかもしれない。けれど僕はその反対をいった。 泡が喉に入る。身体が締め付けられた。冷たく、何のオブラートもなしに。 リズムをとって、斜めに潜る。打ち出されているのか、分け入っているのか。海流の隙間を縫うようにして、身体が大きく形成され、伸びていく。 流れが収まり、静かな海の中。周りに確認するものなく、前にあるだけ砂の円。 円は…