忘れられない小説というものがある。その1冊は絶対に山本文緒さんの『恋愛中毒』なのだが、今から書く角田光代さんの『八日目の蟬』もそのひとつだ。この本は、私が読書を再開してから割と序盤に読んだ本で、読みながらすごくアドレナリンが出たというか、興奮したことを覚えている。もう何もしたくなくて、この本だけ読んで過ごしていたい。そう思いながら、中断するのがもどかしい気持ちで夢中に読んでいた。 この4月、本棚を眺めていたら、この本だけ浮いたように見えた。読みたい本が山程あるため、再読は基本しない。でも、浮き上がってくるようなこの本を見ていたら、どうしても今読まなくてはいけない。と思った。 『八日目の蟬』あら…