万城目学 八月の御所グラウンド (2023年 文藝春秋) 前半は起伏に乏しく、どうしてこれが直木賞なのか、と不思議に感じていた。 沢村栄治の名が出てきて以降、ミステリー小説の様相を呈し始め、迷路にさまよい込んだ。人物相互の関係が整理できなくなり、このあたりは一気に読み通した方がいい。 「八月の敗者」という表現がお見事。これは体験した者でないとわからないだろう。今年は、京都に限らず全国各地で7月、8月の敗者が続出しているのではあるまいか。 結末に至って、主人公はどうやら「八月の勝者」に転じたようだ。うらやましい。 ひと夏をどう過ごすか、の参考としたい。読むなら夏の初めがいい。 ネタばれ防止のため…