序文・この世の地獄 堀口尚次 佐渡島に位置する佐渡金山、または佐渡金銀山は、新潟県にある金鉱山・銀行山の総称である。なかでも相川金銀山の規模が特に大きく、単に「佐渡金山」という場合、相川のものを指す場合もある。 江戸時代後期からは江戸や大阪などの無宿人〈浮浪者〉が強制連行されてきて過酷な労働を強いられたが、これは見せしめの意味合いが強かったと言われる。無宿人は主に水替人足の補充に充てられたが、これは海抜下に坑道を伸ばしたため、大量の湧き水で開発がままならなくなっていたためである。 水替人足の労働は極めて過酷で、「佐渡の金山この世の地獄、登る梯子はみな剣」と謳われた。江戸の無宿者はこの佐渡御用を…