正方形の和食弁当。きっと作法や決りがあるのだろうが、いずれが天地やら左右やら、わきまえのない私には見当がつかない。 温野菜と味飯を中心とした、なんとも上品な弁当だ。はしたないとは思ったが、いったいなん種類のおかずが詰合されてあるものか、箸の先で数えてみたら二十五種類はあった。巾着の中味だの紐役のかんぴょうだの、昆布巻きの芯などまで別物と数えれば、食材数はゆうに三十種類を超える。動物質はといえばどれもひと口大の、炙った白身魚と味つけ煮の帆立貝と串に通った二個のつくね団子とがあるばかりで、あとは野菜・山菜尽くしだ。すべて異なる味で火が通っていて、生ものは一品もない。目立たぬながら、じつに手のかかっ…