雨空だ。深夜に降り出したが、夜が明けてもやまない。屋内作業をするしかない。 芸を磨くための裏噺を語った芸術家たちの言葉には、得がたい面白味がある。聴いてみればなるほどと納得させられる噺が多い。が、コロンブスの卵に似て、聴くまではあんがい気づかない。わがほうの分野に置き換えてみれば、当然かのように、さらにはそれ以外には考えられぬかのように、思えてくる。 小難しい理論は介在しない。ただし精進の歳月が介在する。そして躰をとおして体得された、動かしがたい信念の形をとって言葉になっている。つまりは「云うは易く行うは難い」噺ばかりが並ぶ。そこが面白い。芸談の醍醐味である。 しかしそれらに耳を傾けたからとて…