文芸評論家。1956年新潟市生まれ。父は、物理学者で宮沢賢治研究家の斎藤文一。 成城大学経済学部卒業。児童書等の編集者を経て、1994年評論『妊娠小説』でデビュー。2002年、『文章読本さん江』で第1回小林秀雄賞を受賞。*1 『文壇アイドル論』で、上野千鶴子を批判し、山下悦子と共に上野に対する批判者としても知られる。 ミス・ミナコ・サイトウ(斎藤澪奈子氏、故人。1956-2002)とは別人。
等
*1:以上、『戦下のレシピ』(岩波アクティブ新書)掲載経歴を参考にしました。
斎藤美奈子氏の本は2冊ほど「たまには新書でも読むか」程度の感覚で読んだきりでした。 gomahsango.hatenablog.com gomahsango.hatenablog.com 文芸評論家という肩書からは意外な文体、内容…平たく言えば「面白い」のです。 今回手に取ったのは「趣味は読書。」。 「ベストセラーは読まない」と公言される方はよくいらっしゃいますが、私は読むのが遅くてベストセラーに追いつけないクチであります。そんな私にもうってつけではと思ったのが本書で、斎藤氏は毒舌ありの痛快な書評の連発でベストセラー(本書が世に出たのは約20年前…古めのベストセラーです(笑))の内容もわかるし…
2024年10月30日-11月5日 ・斎藤美奈子『ニッポン沈没 世の中ラボ2』 ・斎藤美奈子『文壇アイドル論』 ・高橋源一郎『文学じゃないかもしれない症候群』 ・斎藤美奈子『忖度しません 世の中ラボ3』 ・山田詠美『風味絶佳』 ・アーウィン・ショー(小笠原豊樹訳)『サマードレスの女たち』 ・P.D.ジェイムズ(小泉喜美子訳)『女には向かない職業』 以下コメント・ネタバレあり
2024年10月23-29日 ・斎藤美奈子『中古典のすすめ』 ・斎藤美奈子『挑発する少女小説』 ・斎藤美奈子『出世と恋愛 近代文学で読む男と女』 ・斎藤美奈子『日本の同時代小説』 ・斎藤美奈子『吾輩はライ麦畑の青い鳥』 ・斎藤美奈子『学校が教えないほんとうの政治の話』 ・斎藤美奈子『月夜にランタン 世の中ラボ1』 ・櫻井稔文『男のいない女たち』 ・よしながふみ『きのう何食べた?』23巻 ・渡辺航『弱虫ペダル SPARE BIKE』8巻 以下コメント・ネタバレあり
2024年10月16-22日 ・有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』 ・キム・フィールディング(冬斗亜紀訳)『犬晴れのクリスマス』 ・アンドレイ・クルコフ(沼野恭子訳)『ペンギンの憂鬱』 ・丸谷才一『笹まくら』 ・辻村七子『宝石商リチャード氏の謎鑑定 再開のインコンパラブル』 ・斎藤美奈子『名作うしろ読み』 ・斎藤美奈子『趣味は読書。』 ・斎藤美奈子『文庫解説ワンダーランド』 ・斎藤美奈子『妊娠小説』 以下コメント・ネタバレあり
★★★★☆ 内容 平成と令和の小説について語り、世の中を考察する対談集。 感想 雑誌「Sight」の企画で毎年年末に行われていたその年の本に関する対談と、平成、令和の小説に付いてそれぞれ語った対談が収められている。雑誌分は2011年から2014年分までの対談が収録されており、東日本大震災で世の中が打ちひしがれていた時から、年が経つにつれてつれて次第に平静さを取り戻していったその空気感が伝わって来て興味深い。 SIGHT別冊「日本一怖い! ブック・オブ・ザ・イヤー2006」 (別冊SIGHT) ロッキングオン Amazon 特に震災直後の、世間が本なんて読んでいる場合か、となっている時に、それで…
あらすじ 「挑発する少女小説」は、斎藤美奈子が描く現代の日本社会と少女たちの複雑な感情を掘り下げた作品です。この小説は、主人公である女子高生、彩花(あやか)を中心に展開します。彩花は、都内の進学校に通う16歳の高校生で、見た目はおとなしく、成績も優秀。しかし、彼女の内面には常に葛藤と欲望が渦巻いています。 物語は、彩花が夏休み中に家族とともに訪れる田舎の古びた別荘から始まります。彼女の家族は、父親、母親、そして弟の4人家族で、彩花は家族との時間に少しの不安と退屈を感じています。しかし、田舎での生活が始まると、彼女はその場所で予期せぬ出来事に巻き込まれます。 別荘の周辺には、古い伝説や謎めいた話…
かつて良妻賢母育成ツールとして生産されたという少女小説(家庭小説)。でも、小説で教育って可能なのかな? 時代を超えて読み継がれる、子供たちを夢中にさせてきた少女小説には、「小説で教育してやる」という大人たちの陰謀からはずれた、むしろそんな思惑を逆手に取った何かが、描かれているのではないか。それはいったい何なのか、を、九つの名作少女小説を取り上げて読み解いていくという本で、それはもう最高に面白い。 私は、少し前に、娘とシンデレラの絵本を読んで、「これでいいのか」ともやもやしていた。そのもやもやを上手く言い表せずに抱え込んでいたわけだけれども、本書の中で斎藤美奈子さんが私のもやもやを痛快に吹き飛ば…
前回の記事の続きです。 「挑発する少女小説」(斎藤美奈子著、河出新書)はミサンドリー(男性嫌悪)に満ちた本でした。理性が飛んでいるとしか思えないほど、ミサンドリーあるいは結婚嫌悪が強いです。特に「若草物語」の章はひどいです。 若草物語は4人姉妹の物語です。主人公の「男の子でなかったのがくやしくてたまらない」次女ジョーは、長女メグが結婚するとき、異常なほどの嫌悪感を表出します。「メグはあの人(結婚相手)に夢中になって、私(ジョー)なんか何もおもしろいことがなくなる」とジョーは私憤を爆発させますが、著者はこの私憤を正当なものとみなして、「そうだ、そうだ、もっと言ってやれ」と囃し立てています。「(ジ…
年が改まって「ちくま」は表紙絵は市川春子さんのものとなりです。 市川さんって誰だと思って検索をかけたら、大学入学時に北海道に移住して、 そのまま札幌に住んで創作活動を行っている方だそうです。このような方がいるの かと初めて知りました。 漫画家さんであるとのことで、代表作に「宝石の国」というものだそうです。 宝石の国(1) (アフタヌーンコミックス) 作者:市川春子 講談社 Amazon 市川さんは、「ちくま」が表紙を依頼するのですから、これからメジャーになって 行く人なのでしょうね。 そういえば、「ちくま」の書き手の半分くらいは女性という感じでありまして、さす がに発行者が喜入冬子さんだけのこ…
◯心や感情のあいまいさ 時代が変わり、価値観が変わったといわれても、実感として受け入れられないものです。 慣習のように思っていたものを文化伝統の継承として大事に守ろうとしている人もいます。そうであれば、行動としても真っ向から対立してしまうのです。 体育会やそういう体質の企業で、改まりにくいのは、その継承こそが誇り、ステイタスになlちたところもあるからです。 たとえば、厳しいことに耐えてこそ実力も成果も伴うのは、確かだからです。それが理不尽なものかどうか、必ずしもわかるわけではないのです。 そうしたことが、苦痛かどうか、自分で選択しているかどうか、など、渦中でいちいち客観視できるものではないでし…