江戸川乱歩を始めとし、さまざまな探偵小説家を生み出した雑誌。 版元は博文館。 1920年(大正9年)創刊で、戦後の1950年(昭和25年)まで続く。
初代編集長は森下雨村。 以下、横溝正史、延原謙、水谷準等が編集長となる。
中島河太郎・編『新青年傑作選 怪奇編 ひとりで夜読むな』(角川ホラー文庫,2001改版)ISBN:4041434041 ミステリー文学資料館・編『「新青年」傑作選―幻の探偵雑誌(10)』(光文社文庫,2002)ISBN:4334732828
たまたま佐藤謙三の日記*1を読んでいたら、『新青年』が出てきた。 (昭和三年三月) 九日(金)曇 3º 5.35 (略) 『キング』もつまらない。『クラク[ママ]』か『新青年』なら少しは刺激も有るだらうが。 (略) (同年十月) 七日(日)雨 一日家、風邪気味。読書で暮す。 『新青年』、『科学知識』共に読むべしだ。 (略) (同年十二月) 十八日(火)晴 (略) 午后『新青年』を見る。「押し絵の奇跡」だなんて、たいした事はない。何処かで聞いた事がある様な話さ。(略) 二十五日(火)晴 (略) 今日はたいした収穫なし。『新青年』を一寸見る。もうそろ/\あきたよ。(略)『世界大衆』など、時間が惜し…
★ 浜田雄介さんが、5月28日(土)に行われる日本近代文学会2022年度春季大会(特集:〈装い〉の政治学 ――一九三〇〜四〇年代のメディアと文学)にて、「『新青年』の〈装い〉戦略」というテーマで発表されます。 - 日本近代文学会2022年度春季大会 〔日時〕5月28日(土) ・29日(日)〔会場〕早稲田大学戸山キャンパス 38号館-AV (状況に応じて中継会場を設定します) ◎28日(土) 午後2時00分より 《開会の辞》宗像和重《特集》 〈装い〉の政治学 ――一九三〇〜四〇年代のメディアと文学 前島志保 消費の女性化と〈装い〉による境界の再編成 ――戦間期雑誌表象を中心に 浜田雄介 『新青年…
★ 浜田雄介さんが、江戸川乱歩記念大衆文化センター主催の公開講演会「『新青年』研究後悔記」で講演をされました。YouTubeにて、2021年12月21日~2022年2月28日までの期間限定で配信されます。以下でご覧ください。 ・『新青年』研究後悔記 講師 浜田雄介 さん(成蹊大学文学部教授) 対談者 石川巧 さん (立教大学文学部教授、江戸川乱歩記念大衆文化センター長) 司会 丹羽みさと さん(江戸川乱歩記念大衆文化センター助教) 主催 江戸川乱歩記念大衆文化センター 第一部 『新青年』研究会の軌跡 www.youtube.com 第二部 神奈川近代文学館「永遠に『新青年』なるもの」の顛末 w…
怖い本祭り最終回って事で、いっきに2冊の本の感想をだべりまくっていこうと思います 1冊目「旧怪談」 まず、京極夏彦…「巷説百物語」「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」は読了済みで、おととい読み終えたのは「旧怪談」という本です 旧(ふるい)怪談―耳袋より (幽ブックス) 作者:京極 夏彦 メディアファクトリー Amazon この作品は、江戸時代の「耳袋」という怪談を京極夏彦氏が現代風の文章にアレンジして読みやすくしたもの 印象的だった話を2つほど… 「ぼろぼろ」 「トイレに行く」と言って20年立ってから戻ってきた男性の話 なんでも20年の記憶がないという、まるでバミューダトライアングルに入った人みたいな事…
日本はミステリー大国だそうだ。他に読める言語が英語と韓国語しかないので、よその国の充実度はわからないけど、たぶん間違っていないと思う。ミステリ―は欧米から入ってきたものだが、翻訳や翻案の過程で独自の広がりを見せた。家にいる時間が長くなり、二時間ドラマの再放送をついつい見てしまう自分がいる。ほとんどが小説が原作のドラマだ。 日本ミステリー小説史 黒岩涙香から松本清張へ (中公新書) 作者:堀啓子 発売日: 2016/09/09 メディア: Kindle版 日本オリジナルという意味でのミステリーと言うべきかそれに代わるものとして読まれていたのが、「大岡政談」だそうだ。いわゆる裁判ものだが、そんな要…
★ 芦辺拓さんと浜田雄介さんが、佐山一郎さんとともに”「新青年」展記念トークイベント 「新青年」という運動体”に出演されます。 ”「新青年」展記念トークイベント 「新青年」という運動体” 【日時】2021年5月8日(土)14:00開演(13:30開場) 【会場】神奈川近代文学館 展示館2階ホール 【料金】一般1,000円(友の会会員800円) *未就学児の入場はご遠慮ください。 【内容】 第1部 講演 「新青年」という運動体――その復活を夢見て 講師=佐山一郎 第2部 講演 ミステリの王国――雑誌の形をした文化祭 講師=芦辺拓 第3部 鼎談 出演=芦辺拓、佐山一郎、浜田雄介 ※申し込み方法など…
★ 『新青年』研究会編の『『新青年』名作コレクション』(ちくま文庫)が発行されました。 〈目次〉 はじめに――『新青年』研究と本書の編集方針 1章 探偵小説壇の成立 ******* 1920~26誌面ギャラリー 白鳥省吾「新しき青年に檄する歌」/樋口麗陽「日米戦争未来記」/探偵小説を募集す/江戸川乱歩「二銭銅貨」/一九二六年一月号目次 『新青年』の誕生と探偵小説の再編(解説) 田中支隊全滅の光景 田所成恭決闘家倶楽部 エル・ジェイ・ビーストン、横溝正史訳ニッケルの文鎮 甲賀三郎代表作家選集? 久山秀子神ぞ知食す 城昌幸毒及毒殺の研究 より 小酒井不木編輯局より 2章 花開くモダニズム ****…
★ 3月20日(土・祝日)~5月16日(日)まで、県立神奈川近代文学館で「創刊101年記念展 永遠に「新青年」なるもの」が開催されます。浜田雄介さんが編集委員をされています。 ・創刊101年記念展 永遠に「新青年」なるもの 会期 3月20日(土・祝日)~5月16日(日)※月曜日休館(5月3日は開館) 時間 9:30~17:00(入館は16:00まで) 会場 神奈川近代文学館 第2・3展示室 観覧料 一般700円、65歳以上20歳未満および学生350円、高校生100円、中学生以下無料 編集委員 浜田雄介 主催 県立神奈川近代文学館、公益財団法人神奈川文学振興会 協力 成蹊大学図書館、二松学舎大学…
★ 浜田雄介さんが、獅子文六『金色青春譜 獅子文六初期小説集』(ちくま文庫)の「解説」をお書きになりました。 ・『金色青春譜 獅子文六初期小説集』、筑摩書房、432ページ、本体880円+税、2020年12月10日刊行、ISBN:9784480437082 C0193 金色青春譜 ――獅子文六初期小説集 (ちくま文庫) 作者:獅子 文六 発売日: 2020/12/14 メディア: 文庫 ※版元ドットコムのHPも、ご覧ください。 https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784480437082
大泉黒石について調査するなかで、辻潤についても調べている時期がありました。その過程で、数点の全集未収録作品を発見したため、ご参考までにその出典や解説(もどき)等を掲載いたします。なお、本記事は基本的に過去に書いたnote記事の転載です(辻潤全集未収録作品|мерцание)。発見次第、随時更新していければと思います。 「打てば響く 1931年問答録」(アンケート) 「文壇酒客放談」(座談会@新宿二丁目「よ太」)+『食道楽』における辻潤の作品 「きやぷりちこ」/「模倣といふやつが一番くだらない」(アンケート) 「選者より」 「断想」 「夢で聽いたデハートメントストアの話」+高洲豊水幹一について …
●『新青年傑作選 第五巻 読物・資料編』 中島河太郎編 立風書房 読了。 実際は三部構成で、第一部読物編、第二部復刻編、第三部資料編となっている。読物編では、獅子文六「西洋色豪伝」が最も気に入った。文章が流れるようで、気持ちよく読める。扱っている題材、すなわち採り上げている人物の魅力で読ませるのが夢野久作「近世快人伝」と秘田余四郎「近世香具師列伝」。海野十三「空中楼閣の話」は、SF風味をまとったナンセンスコントで、馬鹿馬鹿しい愉快さがある。 復刻編では、上記の秘田余四郎に通じるエピソードの魅力がある「いらはい、いらはい放談会」が秀逸。無署名の「阿呆宮」や乾信一郎「阿呆宮一千一夜譚」なんかの、洒…
前々回の江戸川乱歩「押絵と旅する男」を掲載した『新青年』昭和四年六月増大号は、奇しくも小酒井不木追悼号というべき出だろう。口絵写真には四月三日の葬儀場面、及びそのデスマスクなども収められているし、「小酒井不木氏を偲ぶ」は恩師の永井潜東大教授と大学の同窓生を中心とする「追悼座談会」から始まり、続いて乱歩、森下雨村、国枝史郎などの八本の追悼文が寄せられている。 小酒井不木は明治二十三年愛知県に生まれ、東京帝大医学部卒業後、大正六年に欧米に留学したが、その間に喀血し、療養のかたわら医学随筆を発表した。それを読んで、『新青年』の森下雨村は不木に寄稿を依頼し、『殺人論』や『犯罪文学研究』などが書かれ、翻…
筑波大学・世界史B・過去問 ●2024年度 次の各問について、それぞれ400字以内で解答しなさい。なお、解答文中では指定された語句に下線を施すこと。(以下この序文は省略)第1問 前4世紀後半から11世紀までのメソポタミアにおける政権の興亡について、以下の語句を用いて説明しなさい。 クテシフォン シャープール1世 スルタン 大アミール ハールーン=アッラシード 第2問 1110年代から1630年代までの女真・満州の歴史について、周辺諸勢力との関わりに留意しながら、以下の語句を用いて説明しなさい。 オゴタイ 靖康の変 朝鮮王朝 ヌルハチ 完顔阿骨打 第3問 海洋国家としてのオランダの台頭から没落ま…
前回の『十二階崩壊』に見られる今東光の「十二階」への否定的見解とは対照的な思いを描いていた同時代人もいたにちがいない。その一人は江戸川乱歩であり、「十二階」を舞台装置として昭和四年(『新青年』六月号)に「押絵と旅する男」を発表している。 米沢嘉博構成『乱歩の時代』(「別冊太陽」)において、「押絵」はカラー実物が示され、次のように定義されている。「厚紙で人物などを作り、綿などを入れてふくらみをつけ、布をかぶせて作る。武者人形など、歴史物語のヒーローが登場する。明治から大正にかけての子どもたちの玩具」だと。ここでの「押絵と旅する男」のテキストは『江戸川乱歩集』(『日本探偵小説全集』2、創元推理文庫…
(本書の種を割っていますので、ご注意ください。) 『死仮面』は、横溝正史の戦後作品のなかで、長い間「幻の長編」だった。 中島河太郎が1975年に作成した作品目録には、昭和24年(1949年)8月から11月まで『物語』という雑誌に連載されたことが記されていたが[i]、その小説は刊行された記録がなかったし、長編であるかどうかさえわからなかった。 それが突然「カドカワノベルズ」の一冊として出版されたのは1982年のことで、詳しい経緯は、本作を発掘した中島河太郎執筆の「『死仮面』おぼえがき」で語られている。 実際に連載されたのは昭和24年5月から12月で、雑誌『物語』は名古屋の中部日本新聞社の発行だっ…
角川書店 乱歩殺人事件 -「悪霊」ふたたび 芦辺拓・江戸川乱歩著 って本読みました。 すごいお見事な本でした。なるほどなあー。芦辺天才やなあー。 なによりこの本の江戸川乱歩はかっこ悪くないのがすごいです!この本では乱歩のかっこ悪いところがかっこよく修正されてます! いや、私は「乱歩にはかっこ悪いところがある」と同時に「それを踏まえても乱歩の凄さは変わらない」「むしろかっこ悪いところも乱歩の魅力と言ってもいい」とも思ってますよ。 で、そのかっこ悪さとはもちろん「悪霊」の執筆を途中で投げ出して逃げ出したようなところです。でもこの作品の中の彼は、あえて「悪霊」の執筆を途中でやめたんです。あえて「逃げ…
あまりにトリビアルなネタ。古い探偵小説の重度のマニアしか喜ばないはず! 藤原編集室のWebサイト『本棚の中の骸骨』の投稿コーナー「書斎の死体」に掲載されている真田啓介さんの「The Avenging Chance の謎」(2013年5月改訂版)、これが本当に素晴らしいエッセイで、私は初めて中篇の存在を知り、真田さんの分析力に舌を巻いたのものです。それからずっと短篇小説The Avenging Chanceの「初出の謎」にぼんやりとした興味を抱いていたのですが、この度めでたく決着がつきそうな「事実」を見つけたのです!(まだ最終チェックはしてないのですが、海外から本が届くまでのお楽しみです…) き…
友人とぶらぶら早稲田の古本屋街を歩いていたら、思わぬ掘り出し物に出くわした。 桃源社版「黒死館殺人事件」(初版)。立ち読みしたら、所有している創元推理文庫版よりも挿絵が豊富のような感じだったので購入した。帰宅して挿絵を比較したらおんなじだった。初出の雑誌「新青年」連載時のものを完全再現しているのだった。さておきメルカリとかヤフオクで検索してみると、ずいぶんな高値で出品されている。でも、まだ乞食ではないので転売しないよ。じっくり読んで、愛でることにする。
(本書のほか、『蜘蛛男』の犯人について触れています。また、横溝正史の某短編小説についても同様ですので、ご注意ください。) 昭和8年12月から翌年11月まで『キング』誌上で連載された『妖虫』(1933-34年)は、第二回目の(に、二回目!?)休筆期間を経て、江戸川乱歩が再び探偵小説文壇に戻ってきた記念すべき「第二作」である。 では、復帰第一作は?そう、もちろん『悪霊』である。 同長編は、『新青年』昭和8年11月号から華々しい宣伝文句に飾られて連載開始し、しかし、わずか三か月で敢え無く玉砕した。 そして『悪霊』といえば、そう!言わずとしれた、横溝正史による「乱歩罵倒事件」である。 「二年間の休養を…
1920年代のアール・デコと総称される芸術・文化・生活スタイルについて 最近、20世紀前半の文化史等についていくつか本を読んでいるが、このテーマの本を探していると、海野弘の本にあたることが多い。 ただし、アカデミックな研究者というわけではないので、この本も研究書ではない。様々な雑誌等に書いた記事を集めた本になっている。 1985年に出た本を2005年に文庫化したもので、初出は全て1980年代で、文庫化の際に追加収録したものも初出は1998・1999年である。 そういう経緯の本なので、内容としては繰り返しの部分も多い。また、記事によってはかなり短いものもある。 「デザイン」の時代であること、「女…
(本作品のほか、江戸川乱歩の短編小説数編について、内容に立ち入っています。) 江戸川乱歩の連載小説といえば、「陰獣」と「パノラマ島奇談」が双璧ということになるだろう。 いずれも文庫本で100頁を少し越えるくらいの長さで、現代の標準でいえば、どちらも中編小説である。しかし、乱歩自身のとらえ方では、「陰獣」は中編だが、「パノラマ島」は長編だったようだ。自身、そう書いているし、最初の平凡社から出た全集でも、後者は「長編」扱いされている[i]。これは、「陰獣」は三か月にわたって分載されたとはいえ、ひと息に書いて編集に渡したもので、乱歩にとっては書き下ろし小説であったこと。一方、「パノラマ島」は、半年以…
乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび【電子版特典付き】 (角川書店単行本) 作者:芦辺 拓,江戸川 乱歩 KADOKAWA Amazon あの中絶作を書き継ぎ完結させる! そして物語はさらなる仕掛けへ… 江戸川乱歩が昭和8年に鳴り物入りで連載開始した「悪霊」は、傑作となるはずだった。謎めいた犯罪記録の手紙を著者らしき人物が手に入れ、そこで語られるのは、美しき未亡人が異様な血痕をまとった遺体で発見された密室殺人、現場で見つかった不可解な記号、怪しげな人物ばかりの降霊会の集い、そして「又一人美しい人が死ぬ」という予告……。期待満載で幕を開けたこの作品はしかし、乱歩の「作者としての無力を告白」した宣言で…
(「陰獣」の犯人等のほかに、エラリイ・クイーンの『十日間の不思議』のプロットを紹介していますので、未読の方はご注意ください。) 「陰獣」[i]は、言うまでもなく江戸川乱歩全作品中、もっともセンセーションを巻き起こした探偵小説である。 『探偵小説四十年』の記事[ii]を読むと、その評判の大きさが、乱歩自身が収集した客観的資料(雑誌・新聞等の記事など)からうかがえる。さらに、掲載誌『新青年』の編集長だった横溝正史による回顧エッセイ[iii]が、当時の熱狂的反響を伝えてくれる。恐らく日本ミステリ史上、最大の注目を浴びた作品のひとつだろう。 ただ、乱歩自身は、その出来栄えに本当の意味で満足してはおらず…
窓:山本禾太郎 1929年(昭4)改造社、日本探偵小説全集第17篇所収。(4篇) 1928年(昭3)平凡社、現代大衆文学全集、第35巻所収。(2篇) 山本禾太郎(のぎたろう、1889~1951)は「新青年」に『窓』が入選したのを機に作家活動に入った。戦前期における「新青年」「探偵趣味」「ぷろふいる」などに書いたが、寡作家だった。その前までの裁判所書記などの経歴から、捜査資料や検察調書の体裁で事件を叙述するという客観化した視点での書法に特徴がある。語り口も落ち着きがありよく整った構成になっている。他に『童貞』『小坂町事件』『長襦袢』『閉ざされた妖怪館』☆☆☆ 閉された妖怪館:山本禾太郎 国会図書…