三島有紀子監督の去年公開された映画『一月の声に歓びを刻め』を観た。 次女が幼いころ性暴力を受けたあと遺体で発見された洞爺湖岸に向かって、深い雪の中をよろめきながら、うめきながら歩き、「れいこ!辛かったな!お前は汚れてなんかいねえ!」と叫ぶマキの声が、時空を超えて、大阪の堂島にいるもう一人のれいこ、同じように子どものときに性暴力を受け、しかしそこから生き延びて、泣きながら歩き続けるれいこの耳に届いているかのように思えるラストシーンであった。 47年前に亡くなった次女のことを孤独な部屋の中で思い出し、反芻しながら、次第に感情が高まってゆき、最後には、かつて自分の性器のあった場所を激しく殴りつける、…