はいどうぞ。 来たか。よしよし。まず睨む。次にどうする?決まっている。じっくり眺める。顔を近づける。愛でるに近い。 そして匂う。汁からの湯気。イリコではないか。カツオと昆布かしら。いい匂い。しかしそれでは不十分。湯気にあおられるネギの上と、かき揚げと汁の境目の匂いはすべて違う。純粋な出汁の香り。刻みたての葱の放つ新鮮な香り、かき揚げから漂う背徳の匂い。三者が中和すると、脳のスイッチが入る。かき揚げはしっかり固まっていたはずなのに、早くもその端が汁に溶け出している。もう降伏。 壁の時計を見ながら箸を動かす。あと七分あるな。三分あれば十分だ。正しく「慌ただしい」。こうでなくてはならない。ごちそうさ…