8月の終わり、いつも通りの朝だった。蝉の鳴き声とエアコンの唸る音が部屋に響いていて、俺は冷えすぎた缶コーヒーを片手にスマホを眺めていた。 だが、その日、タイムラインのニュースが異様だった。 『都内で3件目の同一手口の殺人事件発生』『深夜~早朝にかけて、住宅街で単独の人物を襲撃』『刃物による犯行、被害者に共通点なし』 普段は読み流すタイプだったが、その記事だけは、なぜか目が離せなかった。被害現場の住所――うちの最寄りの町名があったからだ。 「まさか、こんな近くで…」 どこか他人事のように思っていた事件が、急に現実味を帯びてきた。 それから数日。事件の報道は続いたが、犯人は捕まっていなかった。 た…