息づかいまでが描かれた文章に接すると、ほとほと感心する。 役者の肉声をとおして聴く台詞の魅力は、言葉がたんなる意味や論理にとどまらず、速度であり間(ま)であり強弱であり、音色であり響きであり息づかいであることの魅力である。当然ながら戯曲は、それらを再現する役者の力量に期待した書き言葉で書かれてある。 じつは戯曲や脚本ばかりでなく、小説においてだって、この問題は重要だ。新人賞の選考を拝命したさいに、どうやらこの作者は、書き言葉(文字)で表現できるのは意味と論理のみとしか考えていないらしい作品ばかりを続けざまに読まされると、疲れる。台詞であれ地の描写・叙述文であれ、文字にては表せぬ「息づかい」をい…