ざっくばらんに述べるなら、古代ギリシャ音楽の和風アレンジバージョンである。 遙かに遠く、紀元前。地中海にて誕生した旋律を、ほとんど地球の反対側の大和島根の楽器と感性(センス)で新生させる。 刺戟的な試みが、東京、ドイツ大使館の夜会に於いて実現された。 大正十四年、十二月十七日のことである。 (『アサシンクリード オデッセイ』より、オリンピア) 作曲者の名は吉田晴風。 演奏もまた、吉田晴風とその婦人。晴風が尺八を、婦人が琴を、それぞれ担当したそうな。 当時の大使、ヴィルヘルム・ゾルフは演奏に耳を澄ますうち、次第に夜魔に魅入られた如く恍惚とした心境へと導かれ、 ――素晴らしい、まさに世界的の企てだ…