明治の中ごろ、利根川から房州印旛沼に流れ込む川の両脇に小高い丘があった。川を挟んで片方の丘に、新月の晩になると何やら光るものが無数動いているという噂が立ち始めた。村の長老が「そりゃ、狐の嫁入りじゃよ。ワシらの若いころにゃあ、村の若い衆が集まって見に行ったもんじゃった」と語った。 それを聞いていた若者たちは新月の晩になるとこぞって丘に登った。ところが幾度丘に登っても光るものは何も見えなかった。それでも人一倍好奇心の強い若者が「俺は絶対に見てやるんだ」と "お百度" を踏み出した。それを30日間繰り返し満願を機に早速その丘にひとり向かった。 丘の中ほどに差し掛かった時、若者を暗く霧のようなものが取…