正徳4年5月1日。尾張公が登城した帰り、左内坂で順礼風の男1人が訴えることがあると駕籠の側へ近寄ろうとした。瑞祥院様へ入られるためにこの道筋を通っていた。御供の者が遠ざけようとした。五十人御目付がこの者を招き寄せ、子細を尋ねると尾州門前町通りの者であった。浅草に旅の宿があった。役に立つ話があるので直接訴えたいと云々。無理にその内容を尋ねようとすると、お前のような軽い身分の者には言うようなことではないと云々。屋敷へ連れ帰り、市買(市谷)法性寺の病人小屋へ入れ、番人を附けた。この病人小屋は下々の軽い罪人、領分の無宿者を入れて糾明する場所で、また屋敷での牢でもあった。その後度々詮議を行うが、直々でな…