年末になると寄席でよく演じられる「芝浜」という噺(はなし)があります。落語ファンにはお馴染みの人情噺で、この時期に演じる噺家が多いです。そしてこの噺は、噺家によって中身がかなり違うことでも有名です。今回は「芝浜」を知らない方のために、私が知るあらすじをここに書きます。みなさんが知る「芝浜」と違う部分もあるでしょうけど、そこはどうかご容赦を。 その昔、今の東京の田町辺りに住む貧乏な夫婦がいました。亭主は天秤棒一本で魚を担いで売り歩く魚屋であって、腕がいいのでお得意さんがつくくらいのものでしたが、残念なことに酒好きでした。酒のために休むことも多く、そうなると商売もうまくはいきません。女房はしっかり…