1.文学と社会の相互生成 文学と文化・社会との関係は、「文学は文化・社会につれ文化・社会は文学につれ」だろう。たとば、「孝莫大于严父,威父莫大於配天」という一文を私はあくまで漢文の文体の紹介として耳にした刹那、「家父長的だ」と、つい内容が前景化する(これに対するものでなくとも、儒教ひいては儒教的イデオロギーを俎上に載せてそれが家父長的だという指摘は、いくらかあると思う)。 すなわち、文学において,「その言語を用いている」ということそれ自体にメッセージが再帰的・パフォーマティヴに含まれていることがありうる。その言語を用いている(必然的に選択している)時点で免れ得ない言外のメッセージの発出がある。…