登ったのは、令和元年7月13日だった。梅雨の名残を抱いた湿り気のある空気が、奈良県御所市の高天の里を包んでいた。 ここは古くから神々のふるさとと呼ばれ、修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)が修行した地でもある。登山口に立ったとき、ふるさとの偉大な先人の足音が、この山のどこかに刻まれていると思うと、自然と背筋が伸びた。 杉の立ち並ぶ道を登りはじめる。陽の差さぬ森の中で、木々の幹が真っ直ぐ天へ伸びている。風が葉を震わせ、谷から冷たい空気が吹き上がってくる。ひと息ひと息が、過去への歩みのように感じられた。 金剛山は、標高1,125メートル。古くは「高天山」「葛城山」とも呼ばれた。修験者たちが峰入り修…