源氏の通って来る所の戸口を右近があけると、 「この戸口をはいる特権を私は得ているのだね」 と笑いながらはいって、縁側の前の座敷へすわって、 「灯があまりに暗い。恋人の来る夜のようではないか。 親の顔は見たいものだと聞いているがこの明りではどうだろう。 あなたはそう思いませんか」 と言って、源氏は几帳を少し横のほうへ押しやった。 姫君が恥ずかしがって身体を細くしてすわっている様子に 感じよさがあって、源氏はうれしかった。 「もう少し明るくしてはどう。あまり気どりすぎているように思われる」 と源氏が言うので、右近は燈心を少し掻《か》き上げて近くへ寄せた。 「きまりを悪がりすぎますね」 と源氏は少し…