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Kanecoの日記

 

2013-06-23

10:28

さまざまなことを

ひとつひとつ

転がしているのにも飽きて


永遠の塩で蓋をして

地に埋めて

枝を斜めにさしておく


ばらばらこぼれる老いは

そのうち皮になる

さしのべた腕は

白い花に飾られ

ふかみどりの葉を繁らせる


すべてを忘れてしまうころに

誰かが皮をむいて

房をひらいて

手渡してくれる


胸にしみわたる味は

今日の何かを

呼びもどしてくれるだろうか

2013-05-31

転がらない石を抱えて

03:53

半島の突端に

打ち寄せられた

忘れ形見から

蔓は伸びて

梅雨の雲を

招く


足裏の記憶で

道を辿れば

灯台は閉鎖されていた

釣り人の影に

満潮が重なる


寄る辺ないものが

集まる浜を

ベランダから見下ろし

四方八方に

砕ける波を瞼におさめ

ひとよは終わった


テレビではパンダ

笹を手にして

こっちを見ている

山野にあっては

獰猛である筈が

タグをつけた

ぬいぐるみのような

おまえのまなざし


塩気の強すぎる

牡蠣を口にしたせいで

触角は

眠りの帯を

見つけようとして

まるくなる


熱した脣は

何も伝えることなく

半開きのままだ


もうこれ以上は

転がらない石を抱えて

2013-02-15

飛来

20:07

ついに車の窓を

手で擦って

目を凝らす

突然の雪に

塞がれた夜道


弟が

娘が生まれた

と知らせてきた

父に

そっくりな声で

11時11分に生まれたのだと


四十を迎えても

昨日の夜道を

まだ歩いていると

信じ

いつまでも育ちきらないで

平気でいたけれど


抱き上げた

頭のまるみ

ちいさなお尻から腕に

伝わるおもみ


だいじだいじだいじ

と胸が唱えた

私たちの父がそうであったように

私たちの母がそうであったように

こうして

やっと歳をとる

誕生、おめでとう

2013-02-02

街道筋

11:23

その土地は

嫁入りには小銭を撒くと聞いた

青白い

学校の友だちが生まれた

空の狭い町


本陣があった

ところに

小学校がある

雪の校庭には

犬の足跡ばかり


ここは

もののはためく音が

いつまでも、いつまでも

聞こえている


あるものより

ないものの多さを

なぜ

数えてしまうのだろう

一軒きりの店には

電池がなかった

代わりに傘を買い

立札を拾い読む


人が行き交った

痕を探して

吹雪の中で

スケッチを

始めた人たち

「思うようには描けないのよ、いつもいつも」


山からの雪雲につつまれ

普段を取り落としたら

石畳しか

見えなくなった

2013-01-08

新春騒動

07:13

正月は子規の『仰臥漫録』を読み、「臥して味わう」というテーマで何か書くことを思いついた。夏葉社さんの『冬の本』に天野祐吉が、谷内六郎の限定版の病床日記があると書いてたな…と普段は夕方にしか行かない県立図書館に出かけ、あれこれと本を読んでいたら、車谷長吉が、既に子規と上林暁の病床の食欲について書いている。(「文士の魂」)しばらく熟読していたところ、館内放送で「岐阜5〇〇〇〇〇黄色のマーチの方」と呼び出され、読書は中断、車に戻ると警官が。そのうちパトカーまで横づけ。あっけにとられていると、そばに来た図書館の人が説明してくれた。置き引きが発覚して、警察に連絡したあと、念のため駐車場を見回ったら「あなたの車の窓が…」何で壊したのか穴がボッコリあき、スプライトの瓶の色の直方体の粒がざざっと車内にこぼれている。

 何か取られてませんか?と矢継ぎ早に聞かれる。「はい…何もないようです…何でこんな貧乏にきまってる車の窓を割るんですかねぇ」先に置き引きにあった人は鍵をしていなかったので何か盗られたらしいが、窓はやられなかったらしい。「ああー!鍵なんかしとかなきゃよかった…何でこんな貧乏人の車の窓を割らんでもいいじゃないですかね」口から出るのは、同じことばかり。警察も相槌が打ちにくそうにしている。これは、他の車を狙えばいいのにという具体的な気持ちで言ってるわけでもなく、単なる詠嘆なのだが、窮地では、要らざることが口に出るものだ。

「確認のため」割れたガラスを指差している写真を撮られ(どんな顔をしたらいいんでしょうあの場合)、被害届の訂正を拇印で五ヶ所押し(拭くものがなかったのか、ノートの余白で指を拭いてと言われたのが印象に残る)、駐車場の監視カメラには録画機能がないという絶望的な情報を聞き、一連の手続きは終わった。図書館の用務の人がビニールで器用に窓を塞いでくれたが、吹き込んでくる一月の風は冷たい。車屋は休み。手続きがあるので、二日はこのままだ。

 ガラスを割られたのはショックだったが…のんきなことを言うようだが、それ以上に、図書館で心ゆくまで本を読む時間を奪われたのが悲しかった。平日、図書館が開いている時間は働いているので、なかなか行かれない。たまに図書館に行ってもすぐ蛍の光が鳴り出し、いつも何かしら心を残しながら帰るのが習慣だ。図書館で、充分読書を堪能したなぁ、などと思う日は数年間で幾日もない。やっと訪れた至福の時間だったのだ。ちくしょうだよ…返してもらいたいよ…

 それにしても、警察の人が、取るものがなかったのなら、運転席から遠い場所を、なぜ壊したのだろうかと不思議がっていたが、運転席に座って落ち着いてくると、左後部のガラス窓を割るとは、やはりおかしいな…とやっと思えて来た。しばらく後、混乱から立ち直った頭で、よくよく思い返すと、年末年始に読もうとして手をつけかねていた本をいれた袋が見当たらない。 どうやら『墨汁一滴』と『病牀六尺』の文庫本が入った エコバッグを泥棒は持っていったようだ。

飛び散ったガラスの掃除には手を焼き、窓代には保険が使えず、踏んだり蹴ったりのような後日談も加わった。

窓を破って文庫二冊取るなんて賢い方法だろうか、犯人さん。そして県立図書館の駐車場には録画できる監視カメラを是非設置して貰いたい。これが、とんだ新春騒動顛末でした。お粗末。