エキサイトトラック

エキサイトトラックは、任天堂が2007年1月18日に5800円で発売したWii用レースゲーム。

本作の特徴は、Wiiリモコンによる独特な操作方法です。一般的なレースゲームは、十字キーやアナログスティックを用いて車のステアリングを行いますが、このエキサイトトラックでは、Wiiリモコンを実際の車のハンドルに見立てて、右や左に傾けることで操作を行うのです(十字キーではステアリングを行えません)。Wiiリモコンには、ジャイロセンサーという傾きを検知する装置が内蔵されているため、こういった操作方法が可能になっています。これと同種の操作方法は、後にマリオカートWiiなどにも採用されました。

タイトル通り、本作は非常にエキサイティングなレースゲームになっています。基本的には、他の車よりも早くゴールする事が目的なのですが、レース中は、ブーストジャンプ(勢いをつけた跳躍)、ツリーラン(木に当たらないギリギリのコースを走る)、あるいは他の車に接触したりする事で、そのアクションに応じた数のスターが入手出来、レースの順位+スターの数を総合して、最終的な順位が決定されるというルールになっています。極端な話、ゴールへの到着がビリでも、途中で豪快なアクションを連発していれば、最終順位で1位になるという事も可能です。

また、コース上に設置されたアイテムを入手すると、地面が突然沈没して海になったり、車がパワーアップして障害物を破壊しながら進めるようになったりと、様々な効果が発生します。こうしたアイテムを上手く駆使する事が、レースで勝ち進んでいくカギとなるのです。

尚、本作にはエキサイト猛マシンという続編タイトルも存在します。

エキサイトトラックの車は比較的リアルなデザインだったのに対し、エキサイト猛マシンではカブトムシ・カエル・カメといった生物を模した車が登場するという、非常にユニークな内容になっています。ただ、エキサイト猛マシンは一般販売はされてはおらず、クラブニンテンドーの会員特典として配布されました。クラブニンテンドーとは、任天堂のハードやソフト(サードパーティー含む)を購入することで溜まるポイント数に応じてオリジナルの景品が貰えるという、会員制ポイントサービスの事です。このように、特殊なソフトであるエキサイト猛マシンですが、中古ゲームショップでは2000円程度で販売されており、特にプレミアなどはついていないようです。

ハードドライビン

ハードドライビン(HARD DRIVIN')は、1989年にアタリ社がアーケード用に発売したレースゲーム(ドライビングシミュレーター)。後にいくつかの家庭用ゲーム機にも移植されましたが、ここでは、1990年12月21日に発売されたメガドライブ版(こちらの発売会社はテンゲン)について記述します。

現在のゲームソフトは、その多くが3D作品になっていますが、世の中に3Dゲームが普及し始めたのは、1993年にセガがアーケードで発売したバーチャファイター、及び、1994年にソニーが発売したプレイステーションの登場以降です。それまでのゲーム機は、まだまだ性能が低かったため、ほとんどが2D作品でした。

そんな2D時代に登場したアーケード版ハードドライビンは、世界初の3Dレースゲームだったのです。そして、その移植であるメガドライブ版も、世界初の家庭用3Dゲームなのです(同日に、同じくメガドライブスタークルーザーという3Dゲームも発売されています)。3Dゲームが世の中に広まる4〜5年も前に、既に3Dゲームが誕生していたのは驚きです。いわばハードドライビンは、3Dゲームの先駆け的な存在なのです。

しかし、前述の通り、当時のゲーム機の性能は低いです。近年のグランツーリスモForza Motorsportといったドライブゲームは、それこそ実写と見紛う程にリアルな描写がなされていますが、このハードドライビンは、車や背景はカクカクのポリゴンで表現されており、カラーものっぺりとした単色で、リアルとは程遠い、何とも物足りないグラフィックであることは否めません。とはいえ、ゲーム市場にいち早く3Dを取り入れようとした、本作の心意気は評価出来ると思います。

ゲーム内容は、決められたコースを、制限時間が無くなるまで何周も走り続けるというもので、ゴールは存在しません。全てのコースが、スタート直後に右と左に分岐しており、左側へ行けば、オーソドックスなコースを如何に早く走れるかに挑戦する「スピードドトラック」になり、右側へ行くと、アクロバティックな走りを要求される「スタントトラック」になります。スタントトラックは、ジェットコースターばりに360度縦回転するループコースや、中央部が途切れた跳ね橋を、カーアクション映画さながらにジャンプで飛び越える場面があったりと、かなり破天荒な内容になっています。

本作の特徴として、インスタントリプレイ機能が挙げられます。近年のレースゲームのほとんどに、以前に走行した様子(スタートからゴールまで)を視聴出来るリプレイ機能が備わっていますが、本作のインスタントリプレイは少々趣が違っており、操作をミスしてクラッシュした時など、直後にリプレイが始まり、事故を起こした瞬間が改めて再現されるというものになっています。このインスタントリプレイ、本来は、ミスした状況を再確認し、次のプレイへ活かすという目的があるのだと思います。しかし、多くのプレイヤーは、次第にどれだけ面白いインスタントリプレイが出来るかということにのめり込むようになり、真面目にコースを走ろうとはしなくなってしまったのです。こうした楽しみ方が出来るのも、本作の魅力の一つと言えるでしょう。

スピリット・オブ・スピード 1937

スピリット・オブ・スピード 1937は、2001年4月5日にアクレイムジャパンがドリームキャストで発売したレースゲーム。価格は3800円。1999年にアメリカでリリースされた、同名パソコンゲームの移植作です。

タイトルの1937の通り、1937年当時のグランプリレースを体験するレースゲームです。アルファロメオメルセデスなどのクラシックカー、イギリスのブルックランズやイタリアのモンツァといったコースなど、実在の車やサーキットが忠実に再現されています。また、油圧(下がるとブレーキの効きが悪くなる)や水温(熱くなるとエンジン性能が低下)など、通常のレースゲームではあまり設定されていないパラメータもあり、かなりシビアな操作が要求されることになります。といった具合に、当時のレースの再現という点については、中々の出来だと思います。とはいえ、あまりにも操作がシビアすぎてストレスが溜まってしまいますし、レースゲームとしても非常に地味で、総合的な評価は今一つである感じは否めませんが…。

ところで、この文章をご覧になっている方のほとんどが、スピリット・オブ・スピードというゲームの名を聞いたことが無いと思います。それもそのはず、このゲームの最大の特徴は、とんでもなくマイナーなところなのです。

日本のゲーム業界には、メディアクリエイトという、ゲームソフトの販売本数等を調査している会社があります。このメディアクリエイトのデータによると、スピリット・オブ・スピードの累計販売本数は、何とたったの87本!あまりにも…あまりにも酷い売上げです。私は最初にこの数字を知った時、何かの見間違いではないかと、何度も確認してしまいました。

ちなみに、本作と同時期にプレイステーション2で発売された、ソニーグランツーリスモ3 A-specは、130万本以上もの累計販売本数を記録しています。スピリット・オブ・スピードとは、まるで比べ物になりません。普通、どんなマイナーかつ人気の無いゲームソフトでも、1000本程度は売れるものですが…。おそらく、スピリット・オブ・スピードは、ファミコン発売以後のコンシューマーゲームソフトとしては、史上最低の販売本数ではないかと思います。

ここまで売れていないと、当然市場に出回っている数は相当少ないでしょう。これはさぞやプレミアがついているはず…と思いきや、実は中古ゲームショップでは1000円程度で販売されています。マイナーなゲームソフトの中には、一部に熱狂的なファンがいて、数万円ものプレミアがついている作品も少なくありません。しかし、スピリット・オブ・スピードはとんでもなくマイナーすぎて、ごく一部のファンすら存在しないということなのかもしれません。何と言うか、とことんダメなソフトです…。

ファミコングランプリII 3Dホットラリー

ファミコングランプリII 3Dホットラリーは、任天堂が1988年4月14日に発売した、ファミコンディスクシステム用レースゲーム。同じくディスクシステムで発売されていた、ファミコングランプリF1レースの続編という位置付けです。ゲーム内容は、世界で最も有名なゲームキャラクターであるマリオが乗るラリーカーを操作し、制限時間内にゴールを目指すというものです。まあ、本作の車は、マリオカートのような運転手がむき出しのものではなく、一般的なラリーカーですので、レース中は基本的にマリオの姿は確認できないのですが…。車は全部で3種で、それぞれスピードや耐久力などに一長一短があり、コースによって上手く乗り分けることが、勝利へのカギとなります。ちなみに本作は、マリオやゼルダなど数々の名作を生み出し、世界一のゲームクリエイターと称される宮本茂氏と、現在の任天堂社長である岩田聡氏が、初めて一緒に仕事をした作品です。

3Dホットラリーの売りの一つは、全国のプレイヤーとタイムトライアルができたことです。現在のゲーム機は、全てインターネット接続が可能になっていますので、世界中の人と一緒に、リアルタイムでレースを行うことは容易になりました。ですが、1988年当時にインターネットは存在しませんでしたから、離れた場所にいるプレイヤーと一緒にレースはできません。そこで本作では、ディスクファックスが活用されました。ディスクファックスとは、全国のおもちゃ屋などに設置されたディスクシステム用の端末です。プレイヤーは、自分の遊んだ3Dホットラリーのソフトをお店へ持っていくことで、ソフトに保存されたスコアやタイムなどのセーブデータを読み取り、任天堂へ送信することができたのです。この機能を利用することで、リアルタイムではありませんが、全国のプレイヤーとスピードランキングを争うことができたのです。なお、ランキング上位者には、記念品として特製文具セットが贈られました。

しかし、3Dホットラリー最大の特徴は、タイトルにもなっている3D機能です。2011年に発売されたニンテンドー3DSは、裸眼立体視が可能な画期的なゲーム機として人気を博していますが、当然ながら、1988年に3DSのような裸眼立体視の技術はありません。本作では、ファミコン3Dシステムという専用のゴーグルを使用することで、立体視を実現しています。テレビには右目用の映像と左目用の映像が交互に映し出され、ゴーグルのシャッターがそれに同期して交互に高速で開閉することで、3D映像を表現しているのです。いわゆる、市販の3Dテレビなどと同じ、フレームシーケンシャル方式です。なお、フレームシーケンシャル方式や、3DS裸眼立体視の仕組みは、こちらのサイトで詳しく解説されています。
http://www.gamegyokai.com/column/3ds-ragan.htm

インターネットが存在しない時代に、離れたプレイヤーと擬似的に遊べる仕組みを実現していたことといい、まだまだ未熟だった3D技術を積極的に活用していたことといい、プレイヤーに新たな楽しみを提供しようという試みは、実に任天堂らしいと感じます。

ゼロヨンチャンプ(シリーズ)

ゼロヨンチャンプは、メディアリングが1991年に発売したPCエンジン用レースゲーム。後にスーパーファミコンプレイステーションセガサターンなど、多数のゲーム機で続編が発売されました。ここでは、それらのシリーズを総括した内容を記述します。

ゼロヨンとは、1/4マイル(約400メートル)の直線を走行するレースのこと。0〜400メートルという距離が語源となっています。プレイヤーはいくつものレースに勝ち進み、最速の男ゼロヨンチャンプになることが目的です。

上記の通り、ゼロヨンのコースは一直線のため、なんとハンドル操作は存在しません。また、走行距離もわずか400メートルですから、レースはわずか10秒程度で終わります。こんなのでゲームになるの?と思われるかもしれませんが、本作の真髄は、ギアチェンジにあります。登場する車は全てマニュアル車ですから、自分でギアチェンジを行わなければなりません。普段からオートマチック車しか運転していない人にはピンとこないかもしれませんが、マニュアル車は、車のスピードに合わせて的確にギアをチェンジしなければ、充分なスピードを出すことはできないのです。

なお、このギアチェンジ操作は十字キーで行います。車のハンドルを操作する必要がない、本作ならではの操作形態と言えるでしょう。例えば、二速から三速に切り替える場合の操作は、一旦アクセルボタンを離し、クラッチボタンを押しっぱなしにしながら、十字キーを↑・→・↑の順に入力するというものです。十字キーを実際のシフトレバーに見立てているこの操作は、中々面白いものだと感じます。つまり本作では、如何に素早く的確なタイミングでこのギアチェンジを行うかが、勝負の肝なのです。

このように、ゼロヨンチャンプはシンプルながらに中々奥が深いレースゲームなのですが、本作最大の特徴は、とてつもなく充実したミニゲームにあります。

レースを勝ち抜いていくためには、プレイヤーのテクニックももちろん重要ですが、それ以外にも、お金を払って車をチューンアップしていく必要があります。お金を稼ぐ方法は二つあり、一つはレースに勝って賞金を得るというもの。もう一つの方法が、アルバイト(ミニゲーム)です。

ミニゲームには、寺の地下に巣食う妖魔を退治するRPGをはじめ、麻雀、パチンコ、戦車対戦など、様々な内容があります。特にRPGは、これだけで一本のゲームにできそうなぐらいのボリュームがあり、最早ミニゲームという呼称は正しくないかもしれません。

開発会社のメディアリングもミニゲームを売りにしていたようで、シリーズを重ねるに連れて、ミニゲームのボリュームは増加しました。こうした過剰なまでのミニゲームの充実ぶりから、ゼロヨンチャンプファンの間では、「ミニゲームがメインでレースはオマケ」と考えている人も少なくないようです。

Forza Motorsport 2

Forza Motorsport 2フォルツァ モータースポーツ 2)は、マイクロソフトが2007年5月24日に7140円で発売した、Xbox360用レースゲーム。

Xbox360の性能を活かした美麗なグラフィックスや、リアルな車の挙動(プレイヤーが操作する車は、壁や他の車にぶつかると破損し、それによってスピードやステアリングが変わる)が売りです。登場する車は300種以上で、エンジン・ブレーキ・タイヤなど、様々なパーツをチューニングすることで、走行の特性も変化します。また、XboxのオンラインサービスであるXboxLiveを通じて、世界中のプレイヤーと、最大8台でのオンラインプレイが可能になっています。

Forza2最大の特徴は、車体へのペイント機能です。ペイントと言っても、絵を描いたり、スキャンした画像を取り込むといった機能はなく、○、△、□など、あらかじめ用意された数種類のステッカー(大きさや色は複数種あります)を組み合わせて画像を作るというものです。

これだけシンプルな仕組みだと、せいぜい簡単なロゴを作成するぐらいにしか使えないと思われるでしょう。ですが、ここで日本のユーザーが奮起しました。このあまりにも簡素なペイント機能を駆使して、漫画やゲームなどのキャラクターを描く、痛車(いたしゃ)職人が登場したのです。そのクオリティは、とても図形を組み合わせて作られたものには見えない程の素晴らしい出来栄えです。こうした作品が、YouTubeニコニコ動画などの動画共有サイトに投稿されたことで、実際にゲームで遊んでいるユーザー以外からも注目が集まり、大きな盛り上がりを見せたのです。

なお、Forza2には、XboxLiveを使ったオークション機能が備わっており、ゲーム内通貨を使って、他のプレイヤーと車の売買が可能です。このオークションでは、日本人の作ったクオリティの高いペイント車が、非常に高額で落札されています。アメリカのForza2ユーザーも、日本人が作ったペイント車について、「現実だけでなく、ゲームでも日本の車を買うことになるのか!」と賞賛しているとのことです。

クレイジータクシー

クレイジータクシーは、1999年にセガが発売したドライブゲーム。最初はアーケード(ゲームセンター)で展開され、後にドリームキャストプレイステーション2など、多数の家庭用ゲーム機へも移植されました。

ゲーム内容は、アメリカの架空の町を舞台に、プレイヤーがタクシー運転手となり、コース上の様々な場所にいる客を乗せて目的地まで運び続けるというものです。明確なゲームクリアというものはなく、制限時間内にどれだけ客を送り届けたか(お金を稼いだか)を競う、スコアアタックを重視したものになっています。この説明だけでは、何と言うことはないドライブゲームのように思えるかもしれませんが、実際はタイトル通り"クレイジー"な展開が繰り広げられるのです。

本作では、現実では犯罪となってしまうような走行をしても、一切咎められることはありません。反対車線の走行、邪魔な車は体当たりしてぶっとばす、人が大勢いる歩道を突っ切る(必ず逃げるのでひき逃げはできませんが)、地下鉄内を通り抜ける、水中を走る(オープンカーですけど)など、とにかく破天荒なドライブが可能です。こんなメチャクチャなプレイをせずに、普通に安全運転することもできなくはないですが、制限時間がかなり厳しいため、真面目に走っているとすぐゲームオーバーになってしまいます。ですから、必然的に常軌を逸した走行を強いられることになってしまうのが、このゲームがクレイジーたる所以です。

客のリアクションも非常にユニークです。高低差を利用して大ジャンプしたり、他の車にぶつかりそうなスレスレの走行をすると、何故か興奮してチップをくれます。そして、目的地に早く到着するとハイタッチして喜びますが、遅いと車を蹴って怒ります。あまりにも遅すぎて時間内に目的地まで到着できないと、客は走行中の車から勝手に飛び降りてしまうのです。また、ビルの屋上でタクシーを待っているおバカな客も存在します。といった具合に、プレイヤーだけでなく、客までクレイジーであることが、このゲームの魅力と言えるでしょう。

上記の通り、このゲームは制限時間が厳しいため、初心者はすぐゲームオーバーになってしまいます。つまり、何度も繰り返しプレイすることでコースを把握する、いわゆる覚えゲーとしての側面が強いと言えるでしょう。しかし、客を乗せる&目的地に届ける毎に残りタイムが増えるという仕組みなので、上級者は延々とプレイし続けることも可能です。つまり、初心者は難しくてすぐやめてしまいますし、上級者はずっとプレイし続けられますので、アーケードでのインカム(incomingの略、ゲーム機に投入された金額を表す言葉)はあまり良くなかったと言われています。とはいえ、そのクレイジーな内容から、一部に熱狂的なファンがいることも事実です。