2013年2月号掲載 毎日新聞夕刊編集部記者/藤原章生(当時) 猛スピードで原稿が書ければどんなに楽だろう。ペンの時代なら、さらさらっとだが、今なら自然に指が動き、カタカタとキーボードのはじける音が小気味よく続く。 だが、難しい。記者になってそろそろ24年。とにかく物が書けるようになりたいと思ってきたが、いくら書いても、簡単にならない。ゴールがないのは当然としても、指が止まり動かないこと頻繁なのだ。 先日、哲学者の梅原猛さんに会いに行った。新聞社の編集側に与えられたテーマ、「古事記1300年」をめぐる話だった。京都の屋敷で87歳の梅原さんが上機嫌に話してくれるものだから、ついでに執筆について聞…