いま読む日本国憲法(26)第36条 「絶対」禁止 強い決意 - 東京新聞(2016年9月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016092102000183.html
http://megalodon.jp/2016-0921-1257-26/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2016092102000183.html


警察官や検察官が、被疑者や被告人から自白を得るため、肉体的・精神的な苦痛を与える「拷問」を禁じた条文です。
ポイントは「絶対に」という強調表現。現憲法の中で「絶対に」という言葉が出てくるのは、この一カ所だけです。旧憲法下で、思想統制を目的とした逮捕・拷問が横行したことへの反省からで、拷問や残酷な刑を禁止する強い決意が感じ取れます。
しかし、なぜこの条文だけに「絶対に」があるのか、説明しづらいのも事実です。例えば、一八条の「奴隷的拘束」や「意に反する苦役」は、否定しているものの「絶対に」とまでは書かれていません。改憲論者は、しばしば今の憲法について「日本語としておかしい」と指摘します。その延長線上で、この「絶対に」が話題になることがあります。


自民党改憲草案では「絶対に」が削除されています。草案のQ&Aには、削除の理由は書かれていません。憲法の専門家からは「『絶対に』を外せば、当然、守るべき規則としての力は低下する。一定の条件があれば例外が認められるとの解釈につながる可能性がある」と、問題視する意見が出ています。

この条文に関して議論になるのは、死刑制度との関係です。人権団体や、超党派国会議員による「死刑廃止を推進する議員連盟」などの廃止論者は、死刑が三六条の定める「残虐な刑罰」に当たると指摘。死刑廃止が国際的潮流になっていることや、死刑が犯罪抑止につながらないとも主張しています。


自民党改憲草案の関連表記
公務員による拷問及び残虐な刑罰は、禁止する。

成人年齢18歳 引き下げの懸念解消を - 毎日新聞(2016年9月21日)

http://mainichi.jp/articles/20160921/ddm/005/070/078000c
http://megalodon.jp/2016-0921-0932-56/mainichi.jp/articles/20160921/ddm/005/070/078000c

民法成人年齢を現行の20歳から18歳に引き下げる改正案を政府は来年の通常国会に提出する見通しだ。
公職選挙法が改正され、選挙権年齢は20歳以上から18歳以上に引き下げられた。世界各国を見渡しても、「18歳成人」が潮流だ。こうした状況を踏まえれば、多くの人が高校を卒業する18歳を民法上の成人とするのは時代の流れでもある。
ただし、成人すれば権利とともに責任も重くなる。18歳成人のプラスやマイナス、社会への影響について国民的な議論を広げたい。
満20歳成人は、1876(明治9)年の太政官布告に由来し、1896年制定の民法に規定された。
100年以上が経過して時代は変わり、教育の普及などを理由に18歳への引き下げを後押しする考えは根強い。法制審議会は2009年、「成人年齢は18歳に引き下げるのが適当」との答申と報告書をまとめた。
選挙権年齢引き下げで、今年7月の参院選では約240万人の18、19歳が有権者になった。民法成人年齢引き下げは、大人の自覚をさらに促すことが期待できる。一方、精神的な成熟度を考慮し、18、19歳を、未成年として保護される対象から外すことに慎重な意見がある。
たとえば、18歳でも親の同意なしにローンやクレジットカードの契約ができるようになるため、悪質業者による不当な高額契約などの被害が拡大するのではとの懸念は強い。現状では民法の未成年者取り消し権によって、親の同意のない法律行為を取り消せるが、それができなくなるからだ。
契約の際のリスクを自覚するよう中学・高校生段階で十分な消費者教育を実施すべきだろう。さらに事業者側にも重い説明義務を課すなど、新たな対策の検討が必要だ。
成人年齢の引き下げは、労働環境にも影響を与える可能性がある。労働契約が未成年者に不利であると認められた場合、親権者などが解除できる労働基準法の解除権の対象から18、19歳が外れる可能性が高いためだ。ブラック企業などによる労働被害が広がることが心配される。
法制審の報告書は、こうしたマイナス面も指摘しつつ、若年者の自立を促す施策や消費者被害などの拡大を防ぐ対策の実現を国に求めた。だが現状は不十分だ。200本を超える法律に影響する。政府全体で対策に取り組み、懸念の解消に努めたい。
民法とは別の法律だが、飲酒や喫煙、公営ギャンブルなどの解禁年齢も今後、議論されるだろう。少年法改正については法務省が検討中だ。一律の引き下げになじまない課題もある。課題ごとに慎重に影響を分析し、判断していくべきだ。

児童虐待 役所の枠超え対応を - 朝日新聞(2016年9月21日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12569358.html?ref=editorial_backnumber
http://megalodon.jp/2016-0921-0932-00/www.asahi.com/paper/editorial2.html?iref=comtop_shasetsu_02

全国の児童相談所(児相)が2015年度に対応した児童虐待の件数が、前年度比約16%増の10万3260件となり、初めて10万件を超えた。虐待による18歳未満の子どもの死亡は、14年度で71人にのぼった。
いずれも厚生労働省のまとめで明らかになった。
虐待件数は25年連続で過去最多だ。背景には虐待への社会の意識が高まったことや、専用電話からの相談が増えたこともあるようだ。深刻な事案がこれまで埋もれていたといえる。救済の態勢を整え、被害を防ぐ手立てを急ぐ必要がある。
虐待事例では、目の前で家族に暴力をふるう面前DVなど、直接暴力を受けたときと同じくらい心が傷ついてしまう心理的虐待が半数近くを占め、身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待が続く。
まずは一時保護や家庭への支援がしっかりできる態勢が必要だ。最前線に立つのは児相の児童福祉司だ。主に心理学や教育学を専攻し、児童福祉施設などで1年以上の経験を積んだ職員が、自治体から任用される。その人数は15年間で2・2倍になったが、虐待件数の増加(5・8倍)に追いついていない。
厚労省は、19年度末までに550人増やして約3500人にするよう児相の配置基準を見直す方針だ。早急に実態に見合った要員確保に努めてほしい。
同時に児相まかせでは子どもを守る社会は実現できない。
5月の児童福祉法の改正で、来年4月から児相が通告を受けた事案を市町村に引き継げるようになった。児相を比較的深刻なケースに専念させ、市町村には身近な相談窓口としての役割を果たしてもらう狙いだ。
ただ市町村は財政難で職員を減らす傾向にある。首長が先頭に立ち、人員の重点配分や、専門知識をもつ人材育成にリーダーシップを発揮すべきだ。

司法への期待も大きい。
時に親の意に反して子を引き離すのが児相の仕事だ。しかし児相が親から憎まれ、その後の支援が難しくなるケースが多い。例えば裁判所が一時保護の許可を児相に出すしくみができないか。第三者である裁判所の許可があれば、親との無用な対立を避けられよう。
厚労省も一時保護などへの司法の関与を考える有識者会議をつくり、議論を始めている。どんな手続きや要件を設け、どの程度の証拠を必要とするか。裁判所の態勢づくりもふくめ、課題は多いが、虐待の深刻さを思えば、役所の枠を超えて社会一丸となって対処すべき時だ。

全原発廃炉、国民負担に 料金上乗せ - 中日新聞(2016年9月21日)

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016092102000081.html
http://megalodon.jp/2016-0921-0940-31/www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2016092102000081.html


経済産業省は、東京電力福島第一原発廃炉や事故処理にかかる費用のほか、他大手電力が保有する原発も含む廃炉費用を、原則としてすべての電力利用者に負担させる方向で調整に入った。大手電力が持つ送電網の使用料として、新規参入の電力小売会社(新電力)が支払う「託送料金」に費用を上乗せする案が有力だ。
二十日に有識者会合「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」(東電委員会)と「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」を設置することを発表。年内に正式な結論をまとめ、二〇一七年の通常国会電気事業法の改正案を提出する考えだ。
同省の方針通りに決まれば、四月の電力小売り自由化で大手電力会社以外と契約した消費者も費用を負担することになる。福島第一原発関連の費用に加え、すべての原発に必要となる費用がいくらかかるのか、上限が見えない中で、同省の方針通りに決まれば消費者の負担はさらに増えていく。原発保有する大手電力会社ではなく、原発の電力を使っていない消費者にまで負担を強いる方針には批判が避けられそうにない。
託送料金は、修繕費など送電網の維持管理に必要な経費を基に国が認可し、すべての電力利用者の電気料金に上乗せされている。主に原発の維持に充てられる電源開発促進税も含まれ、東京電力管内では一キロワット時当たり八・五七円。ここに福島第一原発廃炉や除染、賠償に必要な費用やほかの原発廃炉費用も上乗せする案を軸に調整する。
同省は、原発による電力の一部をすべての電力会社が安く利用できる仕組みを整えることで「国民への恩恵がある」(経産省関係者)とし、消費者に上乗せの理解を求める方針だ。
福島第一原発では廃炉や除染、被災者への賠償にかかる費用が一三年の見通しを上回っている。東電の数土(すど)文夫会長は今年七月に「越えるべきハードル(負担)が見えないと、責任を持てない」と政府に支援を要請。自民党も対応を求める提言をまとめていた。同様に一二年にも国に支援を求め、国民の負担を強めた。誰も責任を取らないまま国民負担が膨らむ構図は、今でも変わっていない。
一方、ほかの原発廃炉費用は、同省が一五年の有識者会合「廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループ」で、すべての電力利用者から徴収する方針を示していた。電力の自由化で大手電力会社から顧客が流出すると、廃炉費用を工面できなくなる可能性があるためだとしている。

20年五輪に生かす:Rio to Tokyo - 日刊スポーツ(2016年9月19-21日)

リオは「置くだけ」仮設観客席 東京は基礎工事必要 - 日刊スポーツ(2016年9月19日)
http://www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1712172.html
http://megalodon.jp/2016-0921-1336-47/www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1712172.html

<上>
リオデジャネイロパラリンピックが今日19日、閉会式を迎え、五輪を含めたリオ大会の全日程が終了する。東京大会組織委員会の視察報告も踏まえ「Rio to Tokyo〜20年五輪に生かす〜」と題し、リオから学ぶ東京への課題を3回連載する。初回は「競技会場・インフラ編」。ソフト、ハード両面で来訪者に「圧倒的な五輪感」を植え付けるための課題が浮かび上がった。
卓球や乗馬会場などリオの仮設観客席は、地面に「置いてある」だけの構造だった。地震が少ないとはいえ、安全に観戦できるか不安が拭えなかった。地面が砂浜という不安定なビーチバレー会場も同様だった。
会場整備局の担当者は、リオと同様に鉄骨で仮設席を整備するとしたが「地震、台風への安全性確保のため、柱脚部は最低限、基礎が必要」とした。湾岸地域の場合、強い地盤の支持層まで数十メートルのくいを打つかどうかも検討するという。
敷地が広かったリオでは練習会場が試合会場近くにあり、選手は歓迎した。東京は国や都の体育館などを利用するしかないが、大会中や期間前後は一般客が利用できない不便も生じる。
リオで問題だったのは仮設トイレ。簡易くみ取り式が採用されたが空調設備がなく、臭いがひどかった。真夏に開催される東京では「プレハブトイレが基本となり、空調設置も検討する」(会場整備局)とした。


リオで盗難連発した選手村、本番前に複数テスト必要 - 日刊スポーツ(2016年9月20日)
http://www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1712603.html
http://megalodon.jp/2016-0921-1337-48/www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1712603.html

<中>
リオデジャネイロパラリンピックの閉会式が19日に行われ、五輪を通じて約1カ月半の祭典が幕を閉じた。今大会から学んだことを4年後の東京大会にどう生かすか。
リオの反省から、選手村の運営には本番前に複数回のテストが必要ということがあぶり出された。ベッドメークや洗濯スタッフの契約雇用が遅れて、訓練や教育が十分にできないまま開幕。盗難事件が連発した。スタッフの出入り口に警察官を増員し、身体検査を実施したが、今度は外に運び出すゴミ箱に選手のスマートフォンを入れて盗み出す手口が横行。最終的にはゴミ箱もひっくり返してチェックした。インフラ面でも水漏れなどが多発した。
東京では、選手村が満員になった状態で電気、水道などを使用するテストを行うなどし、最善を尽くす予定だ。警備要員に余裕のあったリオとは違い、場当たり的に増やせない東京では「セキュリティーカメラを増やす」(選手村担当)などして対処を検討する。


国民置き去り支持なき祭典、貧困層は蚊帳の外 - 日刊スポーツ(2016年9月21日)
http://www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1713119.html
http://megalodon.jp/2016-0921-1338-23/www.nikkansports.com/general/news/nikkan/1713119.html

<下>
南米初の開催となったリオデジャネイロ五輪パラリンピックは全日程を終了したが、国民の十分な支持は得られなかった。連載最終回は「かけ離れた指導者と市民の思い」。五輪直前に大統領の汚職疑惑による弾劾決議が行われ、政治家の足の引っ張り合いにより不況は進み、ブラジル国民は冷めていった。東京大会も同様の問題をはらんでいる。
「警察だ! 逃げろ!」。リオ市の観光ビーチ、コパカバーナの露天商が叫ぶと、10人ほどが一目散に逃走した。そんな中、大風呂敷を広げて金メダルのおもちゃ、各国の小旗などを売っていた男性が逃げ遅れ“御用”となった。違法行為ではあるが、貧困層にとって観光客相手に商売することぐらいしか、五輪と関わる機会はなかった。
五輪が政争の具に使われ、国民の熱は下がる一方だった。リオ市内外で「一部の人間がもうけられるだけだ」と怒りの声を上げる市民が多かった。
例えば15競技が行われた五輪公園。敷地の75%が大会後、リオ市から建設会社に譲渡される。リオ五輪組織委担当者によると、譲渡を条件に民間が整備費の一部を負担しているという。
似ている事象が東京都にもある。晴海の選手村予定地、約13万4000平方メートルを129億6000万円で三井不動産レジデンシャル住友商事三菱地所レジデンスなど11社に売却。1平方メートル当たり約9万6000円だ。銀座から3キロ圏内で、同単価は110万円前後と言われており破格。都はさらに約410億円をかけ、防潮堤、上下水道、道路などを整備するまで面倒を見る。事業者は選手村を整備し、大会後は計約5650戸の住宅と商業施設を再整備し、販売する。
豊洲市場問題も含め、不明瞭な税金の使い道が市民の五輪熱を奪う。共同通信の調査でも豊洲問題が解決するなら「五輪計画に影響してもやむを得ない」との回答が74・5%に達した。
怒りの声と同じ数だけ聞いたリオ市民の声がある。「スポーツは大好きだ。会場には行かないがテレビでブラジルを応援する」。サッカー男子でブラジルが優勝した夜、リオは確かに歓喜した。だが市民の心は戻らなかった。今後の「五輪負債」に不安が膨らむ。
政界と財界だけが突っ走っても成功はない。東京も教訓になる。市民の目は一層厳しくなっている。【三須一紀】