緊急事態条項に私権制限を容認 自民改憲案 - 東京新聞(2018年3月3日)

野党時代の2012年に発表した自民党改憲草案に近い表現になる。
有事や大災害などの際、内閣が法律と同じ効力の政令を制定できると規定。

公明幹部、私権制限を否定 憲法改正の緊急事態条項 - 共同通信(2018年2月1日)
https://this.kiji.is/331649288500364385
http://archive.today/2018.03.04-023504/https://this.kiji.is/331649288500364385

公明党北側一雄中央幹事会会長は1日の記者会見で、自民党憲法改正推進本部が昨年末に論点を整理した緊急事態条項の新設を巡る2案のうち、私権制限について否定的な見解を示した。「憲法に規定する必要性は感じていない」と述べた。2案のうち、国会議員の任期延長については「議論に値する」と語った。
私権制限について北側氏は、法律で対応できる内容だと強調。任期延長に関しては、緊急事態の定義や判断の手順の決定など導入へのハードルは高いと指摘した。

<憲法を見つめて 福島の権利>(上)安蔵の志 継ぐ 創案した学者。生家と生存権守らねば - 東京新聞(2018年3月4日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018030402000138.html
https://megalodon.jp/2018-0304-0956-24/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018030402000138.html

昨年十一月ごろ、福島県南相馬市小高(おだか)区で生まれ育った元漁師の志賀勝明(69)は一本の電話を受けた。相手は旧知の鈴木千代(91)。小高出身の憲法学者鈴木安蔵(一九〇四〜八三年)の義理のめいに当たる。千代は言った。「何とか家を残したいのだけれど…」
安蔵は敗戦直後の一九四五年十二月、民間の「憲法研究会」のメンバーとしてまとめた「憲法草案要綱」を発表し、首相官邸連合国軍総司令部(GHQ)にも提出。国民主権などが盛り込まれ、GHQの草案にも影響を与えた。
「国民ハ健康ニシテ文化的水準ノ生活ヲ営ム権利ヲ有ス」
安蔵作成の案には生存権もこう明記され、現憲法二五条に生かされている。その生誕の地が東京電力福島第一原発事故によって汚染され、多くの住民の生存権が踏みにじられてきた。
安蔵の生家は、JR小高駅から延びる目抜き通りの一角にある。東日本大震災で土蔵の壁が崩れたものの、大正時代に建てられた純和風の屋敷外観は風格あるたたずまいを保つ。
家を継いだ千代と長男の新樹(しんじゅ)(67)が薬局を営んで守ってきたが、今は横浜市に避難する。「店舗部分を壊して家を残そうとしたが、業者に難しいと言われ、解体を覚悟した」と新樹は話す。事故時に約一万三千人が暮らしていた小高は、二〇一六年七月に避難指示が解除された。しかし、帰還率は二割程度。安蔵の生家周辺のあちこちで家屋が解体され、くしの歯が欠けたように更地が増える。
「まさか安蔵の生家が壊されるとは」。驚いた志賀は、県内各地の九条の会のメンバーに協力を仰ぎ市側に保存を訴えた。行政も郷土の偉人の足跡を残すことに協力を惜しまず、国の登録有形文化財として保存する方向で調整が進む。
安蔵が民主的な憲法案をつくった背景には、京都帝国大(現京都大)在学中の一九二六年、戦前・戦中の思想弾圧に使われた治安維持法が内地で初めて適用された「京都学連事件」に巻き込まれたことがある。安蔵に師事した立正大名誉教授の金子勝(74)は「学問をするだけで弾圧する国家体制に疑問を抱き、憲法の研究を始めた」と語る。
安倍晋三政権の下で改憲が現実味を帯びる中、志賀は危機感を募らせる。「事故で地域はバラバラになった。さらに九条が変えられて戦争が起きれば、生存権は完全に失われる。安蔵の生家保存をきっかけに、小高の九条の会をもう一度活性化したい」
安蔵の足跡を調べてきた詩人の若松丈太郎(82)=南相馬市原町区=は昨年八月に出版した詩集「十歳の夏まで戦争だった」で、少年時代の戦争体験をつづった。「このままでは、後々の世代に『あのとき、あなたたちは何をしていたのだ』と非難される。安蔵に負けるわけにはいかない」
南相馬市は一六年五月、全世帯に憲法全文の小冊子を配った。安蔵の生家保存を後押しする「はらまち九条の会」の山崎健一(72)=福島市=らが尽力した。山崎も原発事故後、憲法の理想と現実の落差を痛感する。「安蔵が創案した憲法が生誕の地で最も守られていない。憲法を守ろうとしない人たちに新しい憲法をつくる資格はない」 (文中敬称略、佐藤圭)

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原発事故から七年を迎える福島で、憲法の理念と改憲論議を考える。

十歳の夏まで戦争だった

十歳の夏まで戦争だった

(余録)世界では生まれたばかりの赤ちゃんが毎日7000人以上亡くなっている… - 毎日新聞(2018年3月4日)

https://mainichi.jp/articles/20180304/ddm/001/070/175000c
http://archive.today/2018.03.04-005843/https://mainichi.jp/articles/20180304/ddm/001/070/175000c

世界では生まれたばかりの赤ちゃんが毎日7000人以上亡くなっている。国連児童基金ユニセフ)によると、2017年に生後28日未満で死亡した乳児の割合が最も高かったのはパキスタンで、貧困と紛争に苦しむアフリカ諸国が続く。
最も低かったのは日本だ。終戦直後は日本の乳児死亡率も高かった。改善に大きな役割を果たしたとされるのが母子健康手帳だ。妊娠した母親に市町村が手渡し、出産後も母子の健康をフォローする。
日本で誕生した母子健康手帳は海外にも紹介され、今は40カ国以上で使われている。それぞれの国の事情に合わせてサイズや内容が改良されている。国際協力機構(JICA)が協力した25カ国と日本だけでも年間800万冊が発行されている。
乳児死亡率の低さでは世界一の日本だが、現在は子どもの貧困や児童虐待が深刻化している。孤立しがちな母親から悩みや不安を伝えてもらうため、最近の手帳には母親が自由に書き込めるスペースが増えている。
沖縄では父親の育児参加を進めるため名称を「親子健康手帳」に変え、子どもが20歳になるまで継続して使えるようにしている。子育ての環境が変わり、自治体も手帳を進化させている。
学校の授業で母子健康手帳を使っているところもある。いじめ、不登校、自殺願望……。生きにくさを感じる子どもが多くなった。手帳には赤ちゃんだったころの自分のことがつづられている。お母さんのやさしい思いを知り、泣き出す子もいるという。

裁量労働制を違法適用、社員が過労死 野村不動産 - 朝日新聞(2018年3月4日)

https://www.asahi.com/articles/ASL33458LL33ULFA001.html
http://archive.today/2018.03.03-225505/https://www.asahi.com/articles/ASL33458LL33ULFA001.html

裁量労働制を全社的に違法に適用し、昨年末に厚生労働省東京労働局から特別指導を受けた不動産大手、野村不動産(東京)の50代の男性社員が過労自殺し、労災を認定されていたことがわかった。男性は裁量労働制を違法適用された社員の一人だった。東京労働局は遺族からの労災申請をきっかけに同社の労働実態の調査を始め、異例の特別指導をしていた。
労災認定は昨年12月26日付。同労働局は、同じ日に特別指導を公表していた。
安倍晋三首相や加藤勝信厚労相は今国会の答弁で、同社への特別指導を裁量労働制の違法適用を取り締まった具体例として取り上げたが、特別指導は過労自殺の労災申請が端緒だった。
安倍政権は、裁量労働制の対象拡大を働き方改革関連法案から削除し、来年以降に提出を先送りすることを決めたが、今の制度でも過労死を招く乱用を防げていない実態が露呈した。改めて対象拡大への反発が強まりそうだ。
関係者によると、男性は転勤者の留守宅を一定期間賃貸するリロケーションの業務を担当する社員だった。東京本社に勤務し、入居者の募集や契約・解約、個人客や仲介業者への対応などにあたり、契約トラブルへの対応で顧客や仲介業者からの呼び出しに追われていた。2015年秋ごろから長時間労働が続き、頻繁に休日出勤もしていた。体調を崩して16年春に休職。復職したが、同9月に自殺した。その後、17年春に遺族が労災申請した。

不要核物質の集約断念 費用面機構と折り合わず - 東京新聞(2018年3月4日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018030402000129.html
https://megalodon.jp/2018-0304-1012-06/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018030402000129.html


全国の大学や病院、民間研究機関など約千二百カ所で使用しなくなり保管中の核燃料物質について、原子力規制委員会が、国内最大の原子力研究機関である日本原子力研究開発機構茨城県東海村)の施設に集約して保管できないか協議していたが事実上、断念したことが三日、分かった。費用面などで折り合わなかった。保管中の大半の核物質は少量だが処分先はなく、所有者は引き続き、周辺に放射線の影響が出ない適切な管理を求められ、負担にもなりそうだ。
核物質は核テロ悪用の懸念がある上、核兵器への転用を防ぐため、国は全所有者の数量を確認し、国際原子力機関IAEA)に報告する義務がある。処分場や専門の管理機関など国の制度整備が不十分なまま散逸すれば、日本の原子力利用に対する国際社会の信頼低下につながりかねない。
規制委によると、問題の核物質は法規制が始まった一九六〇年ごろまでは国内で比較的自由に流通しており、電子顕微鏡の試料の染色剤や陶磁器の塗料に使われていた。
天然ウランか劣化ウランを三百グラム以下か、トリウム九百グラム以下の所有者は約千八百に上る。ほぼ全ての都道府県にいるとみられるが、規制委は「盗難などの恐れがある」として名称や所在地、個別の所有量を公表していない。三種類の核物質の総量は二〇一六年末で三十六〜四十九キロ。
これとは別に、ウラン三百グラム超などを所有し、担当者の被ばく管理が義務付けられているのは三十七都道府県の二百十。規制委は名称や所在する都道府県を公表しており、メーカーや電力会社、大学が多く、個人もいる。核物質ごとの総量は天然ウラン百二十二トン、トリウム四トン。
規制委が約千八百の所有者に意向調査した結果、回答した八割に当たる約千百が核物質を現在は使用しておらず「譲渡したい」と答えた。所有量が多い二百十のうち約百も使用予定がない。代替品の導入で、核物質を使う必要がなくなったことなどが理由だ。
規制委は集約保管に向け一五年六月以降、機構と十数回協議したが、昨年二月を最後に途切れている。

原発「将来ゼロ」64% 「すぐゼロ」11% 震災世論調査 - 東京新聞(2018年3月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018030402000137.html
https://megalodon.jp/2018-0304-1020-27/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201803/CK2018030402000137.html


本社加盟の日本世論調査会が二月二十四、二十五日に実施した東日本大震災東京電力福島第一原発事故に関する全国面接世論調査で、原発の安全性は向上したと思うが、深刻な事故の懸念は残ると答えた人が過半数の56%に上ることが分かった。安全性は向上しておらず事故の懸念も残るとの回答は27%で、大多数が原発事故への不安を抱いていた。
震災から間もなく七年。被災地の復興は「どちらかといえば順調」が40%、「どちらかといえば順調でない」が36%でほぼ同水準だった。国の取り組みは「大いに評価」「ある程度評価」が計63%だった。被災地や第一原発の現状は37%が「関心は高くなった」と回答した。
今後の原発の在り方は、64%が「段階的に減らして将来的にゼロ」、11%が「いますぐゼロ」と答えた。「段階的に減らすが新しい原発をつくり一定数維持」は20%、「新しくつくり事故前の水準に戻す」は2%にとどまった。
政府は、新規制基準に基づく審査に合格した原発の再稼働を進めている。しかし「新基準で安全性が向上し、深刻な事故も起きない」は5%にとどまった。事故時に計画通りに住民が避難できるかは「あまりできるとは思わない」が43%、「できるとは思わない」が22%と否定的な見方が強い。柏崎刈羽原発新潟県)の再稼働は「賛成」が27%。「事故の全体像や責任の所在が解明されない限り反対」が44%、「どのような状況でも反対」は26%だった。

【注】小数点一位を四捨五入した。

不妊手術強制 資料保存2割のみ 25道府県3596人分 - 毎日新聞(2018年3月4日)

https://mainichi.jp/articles/20180304/k00/00m/040/138000c
http://archive.today/2018.03.04-005127/https://mainichi.jp/articles/20180304/k00/00m/040/138000c

毎日新聞は、旧優生保護法(1948〜96年)下で不妊手術を強制された障害者らの個人名や手術理由を記した資料の保存状況を調べるため、全47都道府県を対象にアンケートと聞き取り調査を行った。資料が確認されたのは25道府県の計3596人(3日現在)分で、旧厚生省などの統計で強制手術を受けたとされる1万6475人の22%にとどまった。このうち全員分が残っていると推定されるのは千葉、和歌山、奈良、鳥取、長崎の5県。東京や大阪など残る22都府県は「現存しない」と回答した。
同法下での強制不妊手術をめぐっては、超党派の国会議員連盟が6日に東京で初会合を開き、救済の在り方について議論を始める。約8割の「記録のない被害者」をどう特定するかが大きな焦点になりそうだ。
調査期間は1月15日〜3月3日。文書の保存期間が終わっていたり、同法が母体保護法に改定され20年以上経過したりしているため、多くの都道府県で資料の所在確認に時間を要した。
全47都道府県からの回答を集計した結果、「現存しない」としたのは22都府県で、うち21都府県は保存期限切れなどを理由に資料を確認できないと回答した。熊本県は「(同法の)関連文書の保存期間は当時最長5年だった」とし、全国最少の沖縄県も「保存期間の20年が過ぎており、廃棄されたと推測される」と答えた。
一方、「現存」を確認したのは25道府県。確認された資料は、医師が提出した「優生手術申請書」▽強制手術の諾否を判断した審査会の関連資料▽手術の適否の参考となった「調査書」▽手術適否決定通知書−−など10種以上に及ぶ。
このうち和歌山県は、103人と記載している国の記録に対し、49〜85年に審査会に諮られた193人分の個人名の載った記録台帳を確認。同県担当者は「このうち何人が実際に手術を受けたかは不明」と回答したが、記録された期間から103人が含まれる可能性が高いという。千葉なども旧厚生省などの統計数字を上回るか同じで、全資料が現存しているとみられる。
また、強制手術が2593人と全国最多の北海道は、4割強に当たる1129人の手術申請書などを確認。さらに増える可能性がある。全国4番目に多い大分県も当初は「現存せず」と回答したが、後日、57年度と60年度の計101人の資料を発見。愛知県も「(条例で定める)保存期間は10年」を理由に破棄されたとしたが、その後、55人の資料を確認した。【遠藤大志、岩崎歩】
国と自治体連携を
優生保護法を巡る問題に詳しい松原洋子・立命館大教授(生命倫理学)の話 補償問題を考えた際、現段階で明らかになっている行政資料だけでは不十分だ。手術に関する手がかりは他にもある。国は、各都道府県と連携し、一日でも早く実態調査を始めるべきだ。
【ことば】強制手術の記録資料
優生保護法下で強制不妊手術を受けた都道府県ごとの人数は、旧厚生省の統計資料「衛生年報」や「優生保護統計報告」などから分かっているが、個人情報の記載はない。当事者の特定は、都道府県ごとに作られた手術の申請書や諾否を決めた審査会資料など個人情報を記した資料が現存するかにかかっている。