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みちの雑記帳

2018-06-07 映画「孤狼の血」を見る(感想)

[]映画「孤狼の血」を見る(感想)


孤狼の血
2017年 日本 東映 126分
監督:白石和彌
原作:柚月裕子「孤狼の血」
出演:<広島県警呉原東署>大上章吾(刑事二課主任・巡査部長。役所広司)、日岡秀一(巡査。松坂桃李)、毛利克志(所長・警視正。瀧川英次)、友竹啓二(係長・警部補。矢島健一)、土井秀雄(主任・巡査部長。田口トモロヲ)、有原巡査(沖原一生)、菊地巡査(さいねい龍二)、<広島県警>嵯峨大輔(監察官・警視。滝藤賢一)、岩本恒夫(調本部長・警視長井上肇)、
<広島仁正会系・五十子(いらこ)会>五十子正平(会長。石橋蓮司)、吉原圭輔(舎弟。中山俊)、金村安則(幹部。故人。黒石高大)、<同・加古村組>加古村猛(組長。嶋田久作)、野崎康介(若頭。竹野内豊)、吉田滋(構成員。音尾琢真)、苗代広行(構成員(関取)。勝矢)、<全日本祖国救済同盟>瀧井銀次(代表。ピエール瀧)、瀧井洋子(銀次の妻。町田マリー)、<呉原金融>上早稲二郎(経理係。駿河太郎)、上早稲潤子(上早稲の妹。MEGUMI)、<養豚業者>善田新輔(九十九一)、善田大輝(岩永ジョーイ)
<尾谷(おだに)組>、尾谷憲次(組長(服役中)。伊吹吾郎)、一之瀬守孝(若頭。江口洋介)、備前芳樹(構成員。野中隆光)、永川恭二(構成員。中村倫也)、柳田タカシ(構成員。田中偉登)、賽本友保(構成員。ウダタカキ)、
<他>高木里佳子(「クラブ梨子」のママ。真木よう子)、岡田桃子(薬局店員。阿部純子)、高坂隆文(記者。中村獅童)


★ネタばれあり!★

映画「仁義なき戦い」シリーズを彷彿とさせる架空の暴力団の抗争を描いた警察小説の映画化。
概ね好評と聞くが、反応は人さまざまだと思う。こういう映画を見たことがない若い人たちは、えげつないシーンに顔をそむけるかもしれないし、初めて見る男たちの気張り合いに高揚するかもしれない、「仁義なき戦い」にしびれた世代には、よくぞ今こういう映画を撮ってくれたという人と、しょぜん昭和の時代は描けない、無理がある、という人がいるのではないかと思う。わたしは、3番目に当たるが、つい、それだけにいろいろ書いてしまった。偉そうだったら申し訳ないけど、それだけ盛り上がったということです。
冒頭、戦後の広島の暴力団の抗争の経過が、新聞記事やスチール写真とともにナレーションで説明され、構成員による抗争の場面が手持ちカメラで撮られているのは、いかにも「仁義なき戦い」で、飛び交う広島弁もなつかしく、やたら気張る男たちのやりとりも下ネタ会話も久しぶりだ。が、昭和を再現して「仁義なき戦い」を正面切ってやろうという無謀さはなく、よく言えば謙虚、逆に言えば及び腰ということになるか。いま、ヤクザ映画を撮るとしたらということをいろいろと考え巡らせて作ったようには思えた。
原作小説の死体の描写には凄惨なものがあったが、映画でも腐乱した人の首や水死体の顔を画面にはっきり映し出す。原作にはない、養豚場での拷問や、吉田の真珠のくだりなども、なかなかえぐい場面ではある。汚いものをちゃんと見せねばということなのか、しかし、どうも、いいとこの子が無理して下ネタをしゃべっているような感じがしてしまう。「クラブ梨子」のママ里佳子の若い愛人となったタカシや、鉄砲玉となって敵方に殴り込む尾谷組の若い衆の永川など、平成のきれいな顔の男子の中から、少しでも昭和のチンピラ面に近い顔の役者を選んだようにも思えて、そこは好感を持った。
原作でもそうだが、加古村組対尾谷組の対立の構図はわかりやすく、刑事である大上が仲介役となってなんとか抗争を食い止めようと奔走する。大上が両陣営とつながりがあるだけで、本家「仁義なき戦い」のように敵味方の筋が入り乱れてぐちゃぐちゃになることはない。どっちがどっち側の人間か顔を覚える前に話が進むので混乱するが、話の展開自体はストレートである。
原作小説の方が映画「仁義なき戦い」シリーズとか「県警対組織暴力」に近い感じがする。瀧井(映画と違って右翼団体ではなくふつうのヤクザである)と大上は友だちだったし、一ノ瀬とももっと親密だったように思うが、映画では、ヤクザたちは大上にとって「駒」に過ぎないということになっている。
ヤクザの抗争のごちゃごちゃした内幕を暴くというよりも、めちゃくちゃやりよる悪徳ベテラン刑事と彼に振り回される新米刑事のバディものとなっていて、それでよかったと思う。原作では最後に明かされる日岡の秘密の任務は、映画では早々に明かされるが、それによって日岡の視点がはっきりして大上との関係性もわかりやすくなる。
ただし、実は大上が日置の日誌を見つけていて、添削していて、しかも最後に「ようやったのう。ほめちゃる。」と書き込んでいるというのは、私には、説明過多で甘すぎる蛇足に見えた。確かにわかりやすくて感動的だが、ここまでハードルを下げてしまっては、観客のものを見る目が損なわれてしまうのではと老婆心ながら心配になる。ハードで渋めの大上と日置の互いへの思いが台無しだ。大上が日置に「綱渡り」の話をし、日置がライターを見つけることで二人の交情は充分描かれていると私は思う。せっかく頑張って昭和の男たちの戦いを描いたのに、ここへ来て平成のやさしさが出てしまった感がある。
日置が大上のライターをつけたところで終わるラストカットはよかった。

原作小説についての感想はこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/michi-rh/20151114/1447473593

2018-06-03 映画「ピーターラビット」を見る(感想)

[]映画「ピーターラビット」を見る(感想)


ピーターラビット PETERRABBIT
2018年 アメリカ 95分
監督:ウィル・グラック
原作:ビアトリクス・ポター
出演:ビア(ローズ・バーン)、トーマス・マグレガー(ドーナル・グリーソン)、マグレガーじいさん(サム・ニール)、声の出演:ピーターラビット(ジェームズ・コーデン)、ベンジャミンバニー(コリン・ムーディ)、フロプシー(マーゴット・ロビー)、モプシー(エリザベス・デビット)、コトンテール(デイジー・リドリー

台湾旅行の際に、チャイナエアラインの飛行機の中で見る。
子どもが小さい時にいただいたマグカップや皿やスプーンでイラストを日々目にし、小型の絵本を子どもに読んであげたこともあるので、だいぶ親しみのあるキャラクターである。
絵本の有名な絵と同じショットが出てきて、おお!と思う。
絵本の話の中身は忘れてしまったが、映画の中でうさぎのピーターたちが置かれた状況はなかなかシビアである。ピーターは、両親と三つ子の姉妹と従兄弟のベンジャミンと暮らしていたが、ある日、農園が作られ、住んでいた場所を追われる。農園を営むのはマグレガー老人。ピーターの父は、マグレガーにつかまってパイにされてしまい、母もその後死んでしまう。
ピーターは、畑に忍び込んでは作物を荒らし、偏屈老人のマクレガーといがみあっていた。隣に住む女流画家のビアは、動物好きで、何かとピーターたちをかばってくれる。ある日、畑でピーターたちを追い回していたマクレガーは、突然倒れ、そのまま死んでしまう。
彼の後にやってきたのは、遠い親戚の青年トーマス・マクレガー。彼は、ロンドンの大きなおもちゃメーカーに勤務していたが、人事に不満を抱いて店内で暴れ、首になってしまったのだ。潔癖症で動物嫌いの彼とピーターらは、壮絶なバトルを開始する。
が、一方で、トーマスとビアは恋に落ちていく。ビアの前では動物好きを装うトーマスだったが、ある日、両者の戦いが激化して、ビアの家を壊してしまう。動物嫌いであることがばれてビアの非難を浴びたトーマスは町を去るが、家が壊れたビアまで町を出ていくことに。ビアを引き留めたいピーターは、自分の行き過ぎた行動を反省し、トーマスを呼び戻すため、ベンジャミンとロンドンに向かうのだった。
イギリスの湖水地方の田園風景が美しい。
動物たちは、いわゆるモフモフしていてかわいいのだが、ピーターはやんちゃというよりけっこう乱暴者でジャイアンみたいなやつで、だんだんおじさん面に見えてくる。一度そう思うと、もうおじさんうさぎ(おじさん面の青年うさぎなのだが)にしか思えなくなってきて愉快だ。当初は、自分たちの家と食べ物の確保のためにトーマスと戦っていたのだが、次第にビアと恋仲になっていく彼に嫉妬し、恋敵をやっつけたい一心で、攻撃がエスカレートしてしまう。
ただかわいいだけの動物映画ではなく、厭世的なことを言う鶏が出てきたり、ビアとトーマスの大人の恋愛が描かれたり、愉快でほのぼのしたギャグがある一方、ピリッと辛いのもあって、なかなか楽しい。
ピーターとのんびりした従兄弟のベンジャミン(茶色の毛に茶色のシャツを着たセンスのなさを何回となくけなされるのが可笑しい)のコンビもなかなかよい。

2018-06-02

[]映画「レディ・プレイヤー1」を見る(感想)

レディ・プレイヤー1 READY PLAYER ONE
2018年 アメリカ 140分
監督:スティーブン・スピルバーグ
原作:アーネスト・クライン「ゲームウォーズ」
出演:ウェイド/パーシヴァル(タイ・シェリダン)、サマンサ/アルテミス(オリヴィア・クック)、エイチ/ヘレン(リナ・ウェイス)、ダイトウ/トシロウ(森崎ウィン)、ショウ/ソウ(フィリップ・チャオ)、ノーラン・ソレント(ベン・メンデルスゾーン)、フナーレ(ハナ・ジョン=カーメン)、アイロック(T・J・ミラー)、オグデン・モロー(サイモン・ペッグ)、アノラック/ジェームズ・ハリデー(マーク・ライラン)

近未来。すさんだ現実世界には希望をもてず、若者たちは「オアシス」と呼ばれるVR(ヴァーチャル・リアリティ)世界でのゲームを楽しんでいた。オアシスの創設者ハリデーは、亡くなる際に遺言を残す。それは、オアシスに仕掛けた謎(3つの鍵)を解き、隠された宝(イースターエッグ)を最初に見つけた者に、莫大な遺産とオアシスの後継者としての権利を与えるというものだった。
叔母とその恋人とスラムのアパートに住み肩身の狭い思いをしている17歳の若者ウェイドは、オアシスではパーシヴァルと名乗り、友人のエイチとともに、鍵の争奪戦に参加していた。最初の鍵を見つけた彼は、一躍オアシスの有名人となる。彼は、「アキラ」の金田バイクを駆る美少女サマンサや、ダイトウ、ショウなどと知り合い、仲間とともに、エッグ獲得を狙う巨大企業101の陰謀に立ち向かっていく。
「オアシス」と現実世界でのできごとが並行して描かれ、オアシスで知り合った仲間と現実世界で出会う場面が、いちいちよい。
80年代の映画やゲームのキャラクターがふんだんに出てきて、「シャイニング」まで出てくるのは、たしかに楽しいのだが、ポップカルチャーにそんなには思い入れがないので、ガンダムやゴジラが登場してえんえんと続く戦闘シーンなどは、実はちょっと飽きてしまった。
エッグの発見場面に至って、敵味方ともに感動して見入っているのはよかった。

2018-03-27 映画「シェイプ・オブ・ウォーター」を見る(感想)

[]映画「シェイプ・オブ・ウォーター」を見る(感想)


シェイプ・オブ・ウォーター THE SHAPE OF WATER
2017年 アメリカ 124分
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:イライザ(サリー・ホーキンス)、半魚人(ダグ・ジョーンズ)、ストリックランド(マイケル・シャノン)、ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)、ゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)、ホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)、
囚われの半魚人と、口のきけない孤独な女性イライザの恋。

国の秘密機関である研究所に、密かに謎の水棲生物が輸送されてくる。夜間勤務の掃除婦イライザは、青く光る鱗に全身を覆われた半魚人の姿を目にし、「彼」に心引かれていく。
当局による半魚人の生体解剖を阻止するため、イライザらは半魚人救出を計画し、ソ連のスパイは半魚人暗殺を計画する、二つの企てが同じ夜に決行され、さらにその企てに研究所の警備担当官が気づいてしまい、果たしてイライザは半魚人を脱出させることができるのか!?というサスペンスが盛り上がるあたり、わくわくする。ソ連のスパイの介入によって事態がひたすらイライザと半魚人に優位に動いていくのが、うまくいきすぎると思いつつも気持ちがいい。それまでひたすら憎々し気なふるまいを見せていた警備担当官ストリックランドの買ったばかりの新車がぐしゃっとつぶされるのが痛快だった。
ゲイの画家ジャイルズ、イライザの同僚の黒人女性ゼルダ、家庭人の一面を見せつつもやはり一身に憎まれ役を負うストリックランドと、脇の人々がなかなか面白い。
イライザの首の傷跡がついた理由については最後まで明かされないが、彼女が切り落とされたストリックランドの指をいとも平然と拾って紙袋に入れたり、半魚人を間近に見ても動じなかったりする様子から、むごいことや異常な状況に慣れている、これまでいろいろ辛い目に遭ってきた人なのだなということが窺え、それゆえ異形の者を受け入れて幸せそうになっていくのが、なんか切なくてよかった。
半魚人はもっと暴れるのかと思ったら、そんなに暴れなかった。暴れる半魚人、薄幸なヒロイン、二人の悲恋! というハードな感じかと思ったら、割と能天気な展開なのもよかった。

2018-03-25 映画「15時17分、パリ行き」を見る(感想) このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

*1521945914*[映画・TV]映画「15時17分、パリ行き」を見る(感想)

15時17分、パリ行き  THE 15:17 TO PARIS
2018年 アメリカ 94分
監督:クリント・イーストウッド
出演:スペンサー・ストーン(本人)、アンソニー・サドラー(本人)、アレク・スカラトス(本人)、ヘイディ(アレクの母。ジェナ・フィッシャー)、ジョイス(スペンサーの母。ジュディ・グリア)、校長(トーマス・レノン)、マーク・ムーガリアン(本人)、イザベル・リサチャー・ムーガリアン(本人)、アヨブ(犯人。レイ・コラサーニ)


実話を数多く映画化してきたイーストウッドが、実際に事件に関わった人物本人をキャストに起用して映画化。
2015年、オランダのアムステルダムからフランスのパリに向かう高速列車内において、銃乱射事件が起こった。乗り合わせたアメリカの若者3人が犯人を取り押さえ、大惨事になるのを阻止した。その3人の若者と、犯人に撃たれて九死に一生を得た乗客の男性とその妻などを事件の当事者本人が演じる。
パリへ向かう高速列車。車内のトイレから銃を持った男が出てきて、廊下にいた乗客の男性の首を撃つ。車内はパニック状態となり、観光旅行に来て電車に乗っていたスペンサー、アレク、アンソニーの3人も、座席の陰に身を隠す。が、スペンサーは犯人に突進し、アレクが加勢して犯人を取り押さえる。犯人捕獲後は、アンソニーと乗客の医師も加わって撃たれた乗客の救命活動に努め、乗客は一命をとりとめる。
列車に乗り込む乗客たちの様子から始まり、時間を追って事件の経過が描かれるのかと思いきや、事件は一瞬で収束する。では映画では他に何が描かれているのかというと、三人の若者の少年時代から現在にいたるまでである。学校生活になじめず校長室に呼び出しを食らってばかりいた彼ら3人の出会いと別れ、そしてそのあとは主にスペンサーに的を絞って、彼のこれまでの人生を追う。彼はあこがれのアメリカ空軍に入ったが、第一志望のパラシュート救出隊には合格できず、ポルトガルで衛生兵としての訓練を受けている。アレクは軍人だった父の血を引いて、オレゴン州兵となり、アフガニスタンに派遣されている。アンソニーについてはあまり詳しく描かれないが、大学生か大学出の民間人である。スペンサーとアンソニーはイタリアを旅行して、ドイツでアレクと合流、3人はアムステルダムで狂乱の夜を過ごした後、パリを目指す。
ラストのパレードが実際のニュースかなんかの映像だろうというのは分かるが、フランスのフランソワ・オランド大統領による表彰はどっちなのかわかりにくく、検索すると、どうやらあれは実際の大統領の映像と別撮りの映像をうまくつなげているらしい。
ずっとぱっとしなかった若者が、英雄になる瞬間をとらえた映画なのだろうが、なんだか不思議なものを見た思いがした。
イーストウッドというと、とにかく突き詰める人というイメージがある。演技とは何か、フィクションとは何か、とことん追及してたどり着いた境地なのだろうか。
イタリアの運河を行く観光船に乗って旅先で知り合った女の子と自撮りに興じるアンソニーとスペンサーの楽し気な様子が割と延々と映される。別にさほど退屈ではなく楽し気でいいなと思うのだが、でもこれって若者が観光してるだけだよなあとも思い、なんだか実験映画みたいだとも思った。