Anna Kavan 1901−68 フランス生まれのイギリスの幻想文学作家。 ヨーロッパ諸国やカリフォルニアを転々として育つ。1926年ヘロイン中毒に陥り、作品中にその影響が現れていると言われる。 代表作『氷』について、B・W・オールディスは、そのSF史の名著『十億年の宴』の末尾を「『氷』 は唯一無比の作品だ」 という、熱烈な賛辞で締めくくっている。
『氷』 山田和子(訳) <バジリコ株式会社・2008・全面改訳・新版>
氷
『愛の渇き』 大谷真理子(訳) <サンリオSF文庫・1981> 『氷』 山田和子(訳) <サンリオSF文庫・1985> 『ジュリアとバズ−カ』 千葉薫(訳) <サンリオSF文庫・1981>
No sun, no shadows, no life, a dead cold "Ice" by Anna Kavan アンナ・カヴァン(1901年4月10日-1968年12月5日)はイギリスの作家。 亡くなる1年前の1967年に出版されたこの作品は彼女の代表作にあたり、翻訳版も数回にわたり刊行されています。 以下内容紹介は、ちくま書房サイトから。 異常な寒波のなか、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気候変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って某国に潜入した私は、要塞のような”高い館”で絶対的な力を振るう長官と対峙するが…。迫り来る氷の壁、地上に蔓延…
年代、場所、不明。 主人公は美術館で清掃員として働くライター志望の女性。 日々、もっと執筆に集中できる生活を送りたいと願う彼女は、裕福な男性と結婚することにより、念願の環境を手に入れる。 というのは、かなりざっくりしたあらすじ。 そこからまず私が興味を抱いたのは、この本、一体なにをもって”Indelicacy”なのか。 私はタイトルが持つ意味に好奇心をくすぐられ、読んでみることにしました。 Indelicacy by Amina Cain この”Indelicacy”という small quiet book、個人的にはとても好きな1冊でした。 Amina Cainはアメリカの作家ですが、とても…
アンナ・カヴァン『あなたは誰?』読み終わる。 「あなたは誰?」と、無数の鳥が啼く― 望まない結婚をした娘が、「白人の墓場」で見た熱帯の幻と憂鬱。 カヴァンの自伝的小説、待望の本邦初訳作品が登場! 今までに読んだアンナ・カヴァンの本の中で一番好みだと思ったわたしは異端でしょうか?? (全著作は読んでいなくて、読んだのは、『氷』、『ジュリアとバズーカ』、『アサイラム・ピース』の3作ですね。) この本もどうしようもない不安感と閉塞感、悪夢の迷宮にずっと囚われているような、それでいて皮膚から汗がじんわり滲み出てしまうような不快感も変わらずにあり、おまけに舞台が人を狂わせようと啼く鳥たちに囲まれた熱帯の…
『氷』【古書】 アンナ・カヴァン:著/山田和子:訳/ 筑摩書房/2015年3刷/文庫版 ¥450-(税込) bullock-books.stores.jp 前回はバラードの『結晶世界』でしたが、あの本を読んでいるとまっさきに思い出すのがこちら。アンナ・カヴァン『氷』です。 序文をSF作家のクリストファー・プリーストが書いているのですが、そこではバラードもカヴァンも”スリップ・ストリーム”というカテゴリーに入れられています。 その辺りの話はぜひプリーストの序文で。 氷がすべてを飲み込み、世界が終わりをむかえていく破滅の物語。 SF的な論理的整合性はなく、むしろ観念的な物語のように見えます。 主人…
タイトルの「見たこともないような美しく冷酷なものに、からめとられる」というのは、川上弘美さんによる解説の中にある言葉なのですが……言い得て妙。文庫版『氷』の帯にも使われているのですが、ずばりこの作品の異様さ、麻痺するような美しさ、残酷さが言い表されている絶妙な表現だと思います。 アンナ・カヴァンの『氷』……いや、この作品、本当にすごくて……私のこれまで読んできた本の中で、明らかにこの作品だけ頭抜けて異質。私の知る本すべてをジャンルごとにカテゴライズしたとき、『氷』は『氷』だけで一つのカテゴリーにせざるを得ない。それくらい、この本に似ている本というのを読んだことがない。 あらすじを簡単に述べると…
アンナ・カヴァン「アサイラム・ピース」(山田和子訳)のちくま文庫版の感想。 本書の章立ては次の通り: 母斑 上の世界へ 敵 変容する家 鳥 不満の表明 いまひとつの失敗 召喚 夜に 不愉快な警告 頭の中の機械 アサイラム・ピース アサイラム・ピースI アサイラム・ピースII アサイラム・ピースIII アサイラム・ピースIV アサイラム・ピースV アサイラム・ピースVI アサイラム・ピースVII アサイラム・ピースVIII 終わりはもうそこに 終わりはない 「鳥」までの短編は、理不尽さや息が詰まるような空気感を共有してはいるけれど、明らかな連続性はない。ところが「不満の表明」から様子が異なってく…