わたしでもよかったはずの「あなた」が、それでもなお「あなた」でなくてはならないのはなぜか セザンヌの犬 (いぬのせなか座叢書, 7) 作者:古谷利裕 いぬのせなか座 Amazon 古谷さんの小説の際立った特徴の一つに、多くの場面で「あなた」が、小説空間の中の基点として主役のように立ち回ることが挙げられる。この「あなた」の感触は、いわゆる二人称小説?的な読者としての「あなた」、つまり現実世界の読者と物語世界の主人公とが交錯させられるような小説的手法のそれとは大きく違う(ようにみえる)。どちらかと言えば、その「あなた」とは、語り手である「わたし」とかなり近いところにある。というよりも、ほとんどの場…