情景模型のこと。 19世紀初頭、フランス人風景画家で後に写真発明家となったルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが、従来のパノラマに代わる新たな投影装置を開発し「Diorama」と名づけたのが発祥とされている。箱の中に風景画と展示物を置き、その箱の一つの面に設けられた窓から中を覗くと、照明などの効果により本当に風景が広がっているかのように錯覚させる見せ物として人気を博し、明治時代に日本でも流行した。
◆曇り空の朝 奈葉が目を覚ましたのは、時計の針が10時を少し回ったころだった。 カーテンを引くと、窓の外には寒々とした曇り空が広がっている。冬の朝特有の、光のない白さだった。 「……寒い」 小さくつぶやき、肩をすくめる。 なぜか身体がひんやりとしていた。冬だというのに、背中にはうっすらと寝汗が残っている。 (ああ、変な夢……) 雪の降る山道。視界の利かない中で、ひとり取り残される感覚。 (いやな夢だな……) 奈葉は無意識のうちに、ベッド脇へ追いやるように置いたスケッチブックに目を落とした。昨夜、眠る直前まで開いていたそれが、まるで夢の続きを引きずっているように見える。 (今日は例会だし、昼すぎ…
「盆景の作り方」という本があります。 国立国会図書館のアーカイブでも見ることができますが、まあ、いろいろと自然鑑賞、庭づくりのうんちくから模型ジオラマ製作に通じるような事柄まで懇切丁寧に解説された教本?のようです。 なかでも盆景作りの初心者向けテクニック解説が参考になります。いわく、 ・ 真っ直ぐな川や、真横に流れる川を作っても興がない ・ 川には必ず源がある。その源が明らかでないと、川として見ることができない ・ 山には必ず地勢があるもので、平地に突起するものではない ・ 低い遠山はまだしも、普通の遠山は、必ず一方に気脈があるように作るべき ・ 同じ形をした山や島、岩石を作ってはいけない ・…
木次駅近くで列車を撮った後、木次線開通記念イベント会場であるチェリバホールへ移動しました。 その中で島根大学鉄道研究会の方たちによるジオラマ模型の展示でした。 子どもさんから大人まで多くの人が集まり、スマホでここぞというところで撮影されていました。皆さん好きなんですね。 木次線で使用されているキハ120系気動車やトロッコ列車奥出雲おろち号のほかに、新旧の特急やくもや瑞風など島根の鉄道路線に欠かせない車両たちがレールの上を走っていた。 いざ撮らせてもらうと、簡単なようで難しい。 速度がそれぞれ違うから、シャッターを切るタイミングが案外難しい。 それにしても本物に近い作りで感動する。 ランキング参…
ランキング参加中鉄道模型 ランキング参加中Nゲージ愛好会 ◆奈葉の部屋 土曜日の昼下がり。 山城模型で代表たちが明日の例会について話し合っている頃、奈葉はマンションの自室で、ひとり黙々とモジュール製作に向き合っていた。 作業机の上には、未塗装の台枠と、レール、定規、鉛筆。余計なものは一切置かれていない。 どんな情景を載せようとも、モジュールの基本は変わらない。台枠の中央に、寸分違わず複線レールが通ること。 奈葉は深く息を吸い、まずはそこから手を付けることにした。 もっとも重要なセンター出しには、亮太が選んでくれたL字形の直角定規が欠かせない。 台枠の角に定規を当て、視線を落とす。木口と定規の縁…
ランキング参加中鉄道模型 ランキング参加中Nゲージ愛好会 ◆山城模型・冬の入口 土曜の昼下がり。初冬の薄い陽が差し込む山城模型は、どこかひんやりとしている。 古い木枠のガラス戸の隙間からは冷気が入り、店長・山城はパーカーの上に薄手のベストを重ねて、棚の商品を黙々と整理していた。 ――“からん”。 小さな鈴の音が、静けさを切り裂く。 「いらっしゃいま…」 振り向いた店長の目に飛び込んだのは、レイルフレンズの森下代表と相原副代表の姿だった。 森下は落ち着いたグレーのダッフルコートにマフラー、相原はネイビーのジャケットに黒のスラックスと、きちんと感のある装いだ。 「やぁやぁ、重鎮おふたり揃ってとは珍…
荘厳で重厚感ある赤レンガの建物。 ちりばめられたような人影。 東京駅丸の内駅舎です。 少しひくと背後には八重洲側にそびえるビル達。 丸の内駅舎含めたこの俯瞰風景は、まるでジオラマのようでした。 ジオラマで有名な栃木県の東武ワールドスクエアの一部といっても違和感ないですね^.^;; 北側を向くと中央快速線が発車していきます。 ちょうどグリーン車が見えました。 2階建てなのでよくわかります。 2025年3月にダイヤ改正してからならではの丸の内鉄道風景でした。 丸の内駅舎全景です。 1,2,3枚目の写真のように部分を切り取っても、こうして全景を眺めても見惚れる存在感でした。 週末に俯瞰した場所は新丸…
ランキング参加中鉄道模型 ランキング参加中Nゲージ愛好会 ◆無情なカレンダー 亮太は、会社のデスク脇に掛けた卓上カレンダーをぼんやり眺めていた。鉄道模型クラブ「レイルフレンズ」の例会日は毎月第2日曜——つまり4週間ごとだ。ところが11月は第5日曜まであったため、次の例会までは5週間あく。 (……35日間も待たなきゃいけないのか。28日間じゃないのかよ) 思わず小さなため息をつく。今まで例会日など気にしたこともなかったのに、指折り数えて待つ自分が可笑しかった。 (これじゃあ、俺は奈葉さんに忘れられちゃうんじゃないか……) 心の中では、いつの間にか「佐橋さん」から「奈葉さん」へと呼び方が変わってい…
ランキング参加中鉄道模型 ランキング参加中Nゲージ愛好会 ◆手付かずの台枠 公開運転会が終わってから、最初の週末が訪れた。 平日、奈葉は仕事に追われ、クラブから与えられたモジュールレイアウトのプランを考える余裕がほとんどなかった。そのせいで、部屋の隅に置かれた台枠だけが、ぽつんと存在を主張している。 スウェットにカーディガンという部屋着姿の奈葉は、膝を抱えて台枠を見つめた。いつものダメージデニムは膝に穴があき、白い肌が少し覗く。それが彼女の“お守り”であり、時に鋭い記憶でもあった。 (……気になっていたのに、結局何も手を付けられなかった。 次の例会でアイデアを示せなかったら……まずいよね) ひ…
ランキング参加中鉄道模型 ランキング参加中Nゲージ愛好会 ◆店に戻る冬の夜 山城模型の店長・山城は、運転会が行われたコミュニティーセンターから店へ戻って来た。冬の夜気をまとったクルマがガレージに沈むように止まる。ヘッドライトが消えると、外は急に静かになる。 「ふぅ……」 小さく息を吐き、裏口のドアを開けると、店内は真っ暗だった。手探りで壁のスイッチを押すと、蛍光灯がパチンと弾ける音を立てて灯る。白く広がった光の中に、今日入荷した新製品の段ボールが無造作に置かれていた。 段ボールの影が床に薄く浮き上がる。 「ああ、そうだった。車両をショーウィンドウに飾っておかないと」 山城は独り言を漏らし、段ボ…
ランキング参加中鉄道模型 ランキング参加中Nゲージ愛好会 ◆ざわつき 亮太はハンドルに手を置いたまま、無意識にため息を漏した。 暗いフロントガラスに自分の顔がぼんやり映る。 (……なんか、今日は疲れたな) いや、肉体的な疲れじゃない。 心が、ざわついているんだ。 午前中にホームセンターへ行ったときのことが、何度も頭の中をリピートする。 佐橋さんが、木材のサンプルを手に取って、少し申し訳なさそうに笑った。 『あの……どれが“いい木”なんですか?私、全然分からなくて』 その声音が、思ったよりずっと柔らかくて。慣れてないくせに、一生懸命ついてこようとするところが、妙に胸に残っている。 (……俺、何を…