今までに数えた羊は何匹だろう。その数は数えていないがそんな民間伝承のお世話になったことはある。しかしあまり効果もなく、かえって開き直ってガバっと布団を剥いで起きてしまうことのほうが多かった。すると明日のことが気になり目がますます冴える。仕方なく布団に入りなおす。いつしか寝ている。高校生の頃からそうだった。「寝不足恐怖症」と勝手に呼んでいた。 六年間を超えるヨーロッパ生活の最後の一年は単身だった。なぜか分からぬがその一年は寝付けないことが多かった。海外生活の疲れの蓄積なのか一人住まいのせいか、わからない。会社の人に聞いてとある薬を薬局で買った。医師にかかっていないのだから今思えばどんな薬だったの…