明治座花形歌舞伎昼の部を観劇。平日の昼間であったにも関わらず、まず九分通りの入り。団体さんも何組か来ていて、中村屋の集客力は素晴らしいと改めて感じた次第。そして芝居自体も、実に結構なものであった。夜の部は慣れない初演の高綱に挑んだ勘九郎であったが、この昼の部は得意演目で勝負、と云ったところであったろうか。年齢も四十代にさしかかり、その充実ぶりを見せつけてくれた芝居であった。 幕開きは『菅原伝授手習鑑』から「車引」。謂わずと知れた三大名作の一場面である。如何にも歌舞伎的な様式美に溢れ、筆者は大好きな場だ。配役は彦三郎の松王丸、橋之助の梅王丸、鶴松の桜丸、蔦之助の杉王丸、楽善の時平。橋之助は以前演…