志賀重昂「日本風景論」は、ヨーロッパや中国・朝鮮の風景を片っ端からくさした上で、日本の風景が世界一だと主張した。中国・朝鮮に関しては、地層が古すぎて活火山がないため、火山岩がゴロゴロしている日本より劣るとした。 けだし朝鮮のごとき、多くは原始紀、太古紀の地質に係り、火山岩たる少々。シナのごとき、北方は一面第四紀地層に係り、平々たる水成岩延縁すること無慮四万二千方里〔日本全面積の一倍七強〕、いわゆる「黄土」と称し、黄河の濁江汪々としてその間に曲折し、そそぎて黄海に入り、上には黄雲惨澹とし、満眸みな黄色。一山一峰のこの際に聳起するなく、風物の単一同様なる真個に行客を倦殺せしむと。 けだし「野は曠く…