義務教育における先生と生徒の関係のような、慣習的な象徴作用への準拠が制度的に強制されやすい状況は、だからこそ、差異化する象徴作用の働きを想起するのに適している。例えば、「先公」という「死語」(この分類名称自体が慣習的な象徴になりきれなかった差異化する象徴の墓標である)は、かつて重厚な敬称(「菅原道真公」)だったものが親愛の情を示す言葉 (「ハチ公」) となり、さらに侮蔑を表す言葉(「ポリ公」)へと転化した、規範的な権威を差異化する(反抗を前景に甘えを後景に置く) 表現である。これに対して、現代の進学校の学業優秀な生徒たちが、ひそかにフロイト用語にひっかけて先生を「エス」 (es) と呼んでいる…