「戦場での猪武者が、政治の庭では豚野郎に堕しおった」 九郎判官義経という国民的偶像を、ここまで情け容赦なくこき下ろすやつも珍しい。 三宅雪嶺、昭和十四年の言だった。 (Wikipediaより、三宅雪嶺) 「あいつはいったい、何をメソメソ、腰越状なぞ書いていたんだ」 と、青史に名高い美文に向けてもまことに烈しく、手厳しい。 「そんな遊戯に耽っている間があるのなら、さっさと鎌倉へ突っ込んじまえ。兄が自分を本気で拒絶するわけがない、これは必ず周囲に讒言する者があり、その悪漢の小細工だ、兄は誑かされておる、すわ一大事、君側の奸を払いのけねば、ものどもイザイザかかれかかれと火の玉になってわめき立てれば、…