産労総合研究所が発行している判例集。略称は『労判』。 1967年創刊で、月二回刊行。 主として労働事件を収載。公的判例集たる『労働関係民事裁判例集』(略称:労民集)は平成9年を最後に編纂が止まっているため、判例の出典として良く用いられている。
『労働判例』2023年1月1・15日号/1275号にテイケイ事件(東京都労委4.6.21命令)のダイジェストが掲載されました。 警備会社のテイケイ(株)による、プレカリアートユニオン役員、組合員、組合員の自宅などへの誹謗中傷文書送付、団体交渉拒否などの不当労働行為について、東京都労働委員会が救済命令を交付しています。 www.toroui.metro.tokyo.lg.jp 【労働相談は】誰でも1人から加入できる労働組合プレカリアートユニオン〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5Fユニオン運動センター内TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971メール…
確かめよう労働条件! 働いている方と会社向けのコンテンツがアップされています。労働に係るルールやQ&A、相談機関の案内や裁判例など労働条件に関するコンテンツがまとめられている。 ◆確かめよう、労働条件!(厚生労働省HP)【別ウィンドウが開きます】https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/ #労働条件,#労働相談,#労働判例,#厚生労働省,https://sr-smaht.com/news-topics/
テイケイ退職強要事件(原告の組合員勝訴)の判例解説が『労働判例』(2022年10月1日号)に掲載されました。 大手警備会社のテイケイ(株)を相手取った退職強要問題の裁判で、今年3月25日、東京地方裁判所で、警備員として働いていた組合員、有賀政敏さんの完全勝利判決が出されました。5時間にわたりホテルに呼び出され退職届を書かされてしまいましたが、雇用関係にあることを前提に判決確定の日までの賃金支払いを命じる画期的な判決です。 www.youtube.com precariatunion.hateblo.jp 【労働相談は】誰でも1人から加入できる労働組合プレカリアートユニオン〒160-0004東京…
拠出金等返還請求訴訟事件(プレカリアートユニオン勝訴)が『労働判例』(2022年9月15日号)に掲載されました。 個人加盟のユニオンが、組合員のために使用者と交渉し、解決にあたって拠出金を受領することは非弁行為にはあたらない、などと判断した判決です。 プレカリアートユニオンのウェブサイトでも説明しています。https://www.precariat-union.or.jp/ 判決文です。https://www.precariat-union.or.jp/file/top_news_03.pdf 【労働相談は】誰でも1人から加入できる労働組合プレカリアートユニオン〒160-0004東京都新宿区四…
ここでは、社会保険労務士試験の選択式対策について、私の見解を書こうと思います。 社労士の試験は選択式と択一式があり、それぞれの全科目に最低基準点が設けられています。 選択式は大問1つに5個の空欄があり、3問正解が最低基準点となります。 択一式は大問1つに10問あり、4問正解が最低基準点となります。 択一式の4点は、ほとんどの方はクリアできると思います。 選択式の3点もほとんどの大問でクリアできますが、毎年、大問の1~2は難問で構成されるので、ここが解けずに不合格になることが多いのではないでしょうか。 令和2年度は統計調査の名称が五問全問を占める奇問が出題され 令和3年度は労働一般常識がかなりの…
本当にふと思ったことを書くだけで、決して受験生の皆様を恐怖のどん底に落とすつもりはありません。先に言っておきますが、ここから話すことは可能性は限りなく低いです。 昨年の選択労働一般常識の出題法を見ていて、知らない人がいるかもしれないので少し解説しますが、全問が「統計の名称」を選択するという恐怖の問題でした。つまりこれこれこういう統計の名前は何ぞや、が5問全問出るという、しかも4択にならず20択のまま出てしまう。例年なら出ても数問レベルで終わってたのが全問で出たわけです。 受験生の中には泡吹いた人もいるでしょう。「統計は数字だけではなくそういう問われ方もする」と意識できていた人にとってはボーナス…
コロナ禍の影響もあるのか、雇い止めに関する判例が多く聞こえてきます。 今回ご紹介する「高知県公立大学事件」も5年を超えたところから申し出ることができる、いわゆる”無期雇用”とプロジェクトの期間が問題になった事例です。
1.不正確な発言を捉えて揚げ足をとられたら・・・ 懲戒処分を受ける人は、処分を科されるに先立ち、何等かの理由によって使用者から目を付けられている方が多いように思います。この場合、目を付けられる⇒行動を監視される⇒粗を見つけられる⇒懲戒処分を受ける、といった過程を経て処分が行われます。 見つけられる「粗」には様々なものがありますが、その中の一つに言動があります。 不適切な言葉遣い、上長に対する不穏な発言、正確性を欠く物言いは、職場への悪影響を説明しやすく、懲戒事由として構成されることが少なくありません。 それでは、職場で不正確なことを口走ってしまった労働者は、常に「嘘を言った」と非難され、懲戒処…
1.タイムカードが「ない」という主張 残業代請求を行うにあたっては、タイムカードが重要な証拠になります。「機械的正確性があり、成立に使用者が関与していて業務関連性も明白な証拠」(佐々木宗啓ほか編著『類型別 労働関係訴訟の実務Ⅰ』〔青林書院、改訂版、令3〕169頁参照)とされているからです。 上述のような証拠としての性質上、「タイムカード・・・等による客観的記録を利用した時間管理がされている場合には、特段の事情がない限り、タイムカード・・・等の打刻時間により、実労働時間を推認するのが裁判例の趨勢である」と理解されています(前掲『労働関係訴訟の実務Ⅰ』170頁参照)。 タイムカードは真実を解明する…
1.固定残業代 「時間外労働、休日および深夜労働に対する各割増賃金(残業代)として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額」を固定残業代といいます(白石哲編著『労働関係訴訟の実務』〔商事法務、第2版、平30〕115頁参照)。残業代の支払い方法を定額払にするものであるため、実際に行われた時間外労働等により発生する割増賃金の額が、固定残業代を下回ったとしても、使用者は労働者に対して固定残業代に相当する額を支払わなければなりません。 他方、固定残業代を導入したところで、法で定められている割増賃金の支払を免れることはできません。実際に行われた時間外労働等により発生する割増賃金の額が、固定残業代を上回…
1.労災保険制度とメリット制 労働者災害補償保険法は、業務災害や通勤災害により被災した労働者に対し、手厚い保険給付を行うことを規定しています。 この保険給付を行うための費用は、原則として事業主が負担する保険料によって賄われています。事業主が負担する保険料は「メリット制」という仕組みで計算されています。これは災害の多寡に応じて保険率や保険料を上げ下げする仕組みをいいます。 メリット制のもとでは、労災事故が少なければ少ないほど保険料が安くなり、労災事故が多ければ多いほど保険料が高くなります。いわゆる「労災隠し」が行われる背景には、このメリット制があり、労災が認められるのか否かについて、労働者と事業…
1.脈絡によって真逆の意味を持つ言葉 脈絡によって真逆の意味を持つ言葉があります。 例えば、「夜道は気を付けて帰れよ」という言葉があります。 塾講師が、生徒である小中学生に対し、講義終了後にこの言葉を言ったとしても、通常、それが法的に問題になることはありません。 しかし、暴力団員が、一般人に対し、凄んでこの言葉を使ったとしたら、それは脅迫として民事的にも刑事的にも問題になります。 こうした日本語表現の多義性は、冗談としても良く使われます。 有名な例として「押すなよ!絶対に押すなよ!」と言った後に押され、熱湯の中に落とされることをネタを思い浮かべる人もいるのではないかと思います。 絶対に押すなよ…
1.定年後再任用 民間企業は、高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、 ① 65歳までの定年の引き上げ、 ② 継続雇用制度の導入、 ③ 定年制の廃止、 のいずれかの措置を講じることになっています(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項)。 概ねの企業は上記のうち②を選択しています。この継続雇用制度は、65歳までの契約更新が原則とされている限り、1年毎に雇用契約を更新する形態でも良いとされており、少なくない企業が1年毎の更新制を採用しています。 高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)|厚生労働省 公務員にも類似した制度があり、定年後再任用制度などと呼ばれています。 …
1.消滅時効と権利(債務)承認 債権には「消滅時効」という仕組みがあります。ごく簡単にいえば、一定期間、権利行使をしないでいると、権利自体が消滅してしまう仕組みです。 現行民法上、一般債権は「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間」で消滅してしまいます(民法166条1項1号参照)。また、賃金債権の消滅時効は3年とされています(労働基準法115条前段、附則143条3項)。 この時効制度には「更新」という概念があります。これは、一定の事由があると、それまでの時効期間の進行がリセットされ、また一から時効期間の進行が始まるとする仕組みです。 時効には幾つかの更新事由がありますが、そ…
1.提訴記者会見と名誉毀損 訴訟提起した事実を記者会見をして広く告知することを、一般に提訴記者会見といいます。労働事件に限った話ではありませんが、提訴記者会見をすると、名誉毀損だとして、被告側から逆に訴え返されることがあります。 提訴記者会見は、権利救済に不可欠な行為というわけではありません。そのためか、近時の裁判例では、違法性が阻却される要件が厳しく吟味される傾向にあるように思われます。 しかし、近時考案された判例集に、提訴記者会見の適法性を比較的緩やかに認定した裁判例が掲載されていました。京都地判令4.9.21労働判例ジャーナル131-22 コード事件です。 2.コード事件 本件で被告(反…
1.固定残業代の有効要件 最一小判令2.3.30労働判例1220-5 国際自動車(第二次上告審)事件は、固定残業代の有効要件について、 「通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である・・・。そして、使用者が、労働契約に基づく特定の手当を支払うことにより労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったと主張している場合において、上記の判別をすることができるというためには、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要するところ、当該手当がそのような趣旨で支払われるものとされているか否かは、当該労働契約に係る契約書…
1.新型コロナウイルスに感染/感染が疑われた労働者の復職問題 新型コロナウイルスに感染した労働者や、感染が疑われる労働者に対し、会社が休業や自宅待機を命じることがあります。 他の従業員への感染を防ぐため、そうした措置をとること自体に特段の問題はありません。しかし、休業や自宅待機からの職場復帰にあたり、慎重になりすぎるあまり、労働者を不当に職場から締め出しているのではないかと思われる事案も散見されます。労働者の側に感染の怖れがないことの証明を求め、それがない限り職場復帰を認めないといった対応が典型です。 それでは、使用者側からこうした対応をとられた場合、労働者としては、どのように対応しておけばよ…
1.有給休暇の取得 有給休暇の取得に際し、就業規則で一定の予告期間を置くように求められていることがあります。 こうした就業規則の定めは、直ちに違法であると理解されているわけではありません。例えば、最一小判昭57.3.18労働判例381-20 電電公社此花局事件は、「交替服務者が休暇を請求する場合は、原則として前前日の勤務終了時までに請求するものとする。」との就業規則の定めを労働基準法39条(年次有給休暇)に違反するものではないとした原審の判断を是認しています。 ただ、これは「前前日」であるから許容されたのであって、不合理に長い予告期間を設けるようなことがあれば、その適法性は当然問題になり得ます…
1.特定の労働者を狙い撃ちにする就業規則の変更 意に沿わない労働者を退職に追い込むなどの目的で、就業規則が変更されることがあります。変更に合理性がある場合、変更後の就業規則を周知させることにより、労働者の個別同意を得ることなく、労働条件を不利益に変更することができるからです(労働契約法10条参照)。こうして労働条件を悪化させ、当該労働者が自発的に退職するよう圧力をかけて行きます。 しかし、就業規則の変更を変更するためには、事業場の労働者の過半数を代表する者からの意見聴取を行うことが必要とされています(労働基準法90条1項参照)。 当たり前ですが、事業場の多数の労働者の労働条件を不利益に変更して…
1.配転命令と職種限定合意 一般論として、配転命令には、使用者の側に広範な裁量が認められます。最二小判昭61.7.14労働判例477-6 東亜ペイント事件によると、配転命令が権利濫用として無効になるのは、 ① 業務上の必要性がない場合、 ② 業務上の必要性があっても、他の不当な動機・目的のもとでなされたとき、 ③ 業務上の必要性があっても、著しい不利益を受ける場合 の三類型に限られています。業務上の必要性が広く認められていることもあり、いずれの類型を立証することも容易ではありません。 しかし、職種限定合意の存在を立証することができれば、権利濫用を立証できなかったとしても、配転命令の効力を否定す…
今週の新着雑誌です。 新着雑誌のうち最新のものは貸出できません。閲覧のみです。 労政時報 4051号 2023.2.24 (201437530) 労務事情 No1465 2023.3.1 (201437621) 人事の地図 No1242 2023.3.1 (201437597) 月刊人事マネジメント 387号 2023.3.5 (201437654) 労働判例 No1278 2023.3.1 (201437563) 詳細な目次はこちら
1.労働者派遣契約と雇止め法理 有期労働契約は期間の満了により終了するのが原則です。 しかし、①有期労働契約が反復更新されて期間の定めのない労働契約と同視できるような場合や、②有期労働契約の満了時に当該有期労働契約が更新されると期待することに合理的な理由がある場合、使用者が期間満了により雇用契約を主張することに、一定の制限が加えられます。具体的に言うと、労働者が契約の更新を望む場合、客観的合理的理由・社会通念上の相当性が認められなければ、更新を拒絶することができなくなります(労働契約法19条)。法定化される前の呼び名にちなみ、このルールは雇止め法理と言われることがあります。 この雇止め法理は労…