小説家。1927年(昭和2年)5月1日-2006年7月31日 東京生まれ。作家の津村節子は妻。 学習院大学国文科中退。長く作家修行をしたが四回芥川賞候補となるも受賞に至らず、『星への旅』で太宰治賞、『戦艦武蔵』で事実上の作家デビューを果たし、『関東大震災』等で菊池寛賞、『破獄』で読売文学賞、『冷い夏、熱い夏』で毎日芸術賞、『天狗争乱』で大佛次郎賞を受賞している。大量の史料や証人に取材した、緻密な文体の記録小説・歴史小説に定評がある。芸術院会員。
大正四年、北海道の三毛別で発生した「三毛別羆事件」に基づく吉村昭さんの小説。怖かったなぁ。初版の刊行は1977年。少々古い作品ではあるが、古さは感じさせない。 羆嵐(新潮文庫) 作者:吉村昭 新潮社 Amazon 北海道北西部の天塩(てしお)国苫前(とままえ)郡苫前村の山間部。三毛別川(さんけべつがわ)の支流に営まれた六線沢という村落で、子供一人が殺害され母親が行方不明となっていることが発見された。クマの仕業とあたりをつけた村の人々は隣の三毛別村に応援を求める。三毛別の区長は銃を持つ5名の村民を中心に討伐隊を編成し、六線沢を訪れたが、そこで目にしたのは想像を大きく上回る巨大なヒグマであった。 …
この頃ちょっとね、いやかなり前からいよいよだなって感じは持っているのですが、忘れ物や勘違いやうっかりが徐々に増えてきたのですよ。 川べり 以前、外出して折角買ったものをどこかに置き忘れたことを書きました。あれはどのブログだったかな、作っては消しを繰り返しているのでもう忘れてしまいました。 ところが今回は、忘れてもいないのに忘れたと思い込んで大騒ぎ。もう一度服を着替えてスーパーへ行って、こんなの忘れていなかったかと問うても「さあ…」の返事。また勿体ないことをしたと落胆しながら戻ったら、ふと見るとそこに置いてある。 まったくこの頃はですよ、ちょっと置いたらそれがどこへ行ったかわからなくなるのですよ…
【山手線で、偶然出会ったおばあちゃんと話した東京大空襲のこと】2012年の3月10日、かつてのブログにこんなことを綴っていました。 ---------------------------------------------------- 1年前、2011年3月11日に日付が変わってすぐ、昭和20年3月10日の東京大空襲のことについて書いていました。 それから十数時間後に、あの大震災が起きることは予想だにしていませんでした。その日記を、少し手を加えて、ここに再掲します。 ---------------------------------------------------- 3月10日は、東京が…
著者:吉村昭出版社:新潮社 ずっと既読本だと思っていたが年末にふと筋書きを読んで潜水艦の話じゃない! とようやく未読本だと気づいた。 だいぶ前に読んだ「深海の使者」と勘違いしていたらしい。 こんなに面白いのにもったいないことをしたもんだ。 日露戦争、7か月近い期間をかけて日本海軍をせん滅すべくウラジオストックに向かう ロシア大艦隊(バルチック艦隊)の出航から日本海海戦、ロシアの歴史的大敗、 講和条約の顛末や双方の指揮官のその後までが淡々と描かれる。 また、大国に怯えていたにも関わらず大勝したことによる 日本国内の高揚や落胆など、日露両方の視点で冷静に描かれ、 とても長い作品だが最後まで飽きさせ…
封切り二日目。 席数244の【CINE6】の入りは二割ほど。 『吉村昭』の原作は江戸末期の福井藩に実在した医師『笠原良策』をモデルにしたと聞く。 藩内のみならず、近隣諸藩にも種痘を広めた経緯と努力は映画でも描かれている。 彼は過去に天然痘の患者に何の治療も施せなかった過去があり、何とかしたいとの強いこころざしから、私財を投げ打ち、無私の思いで奔走する。 が、それを阻む勢力が存在するのはお約束。 現代風に言うとイノベーションを阻害する幾つかの要因に当てはまるか。 個人的には、「企業文化」「過去の成功体験」「社内政治、縄張り意識」を挙げたい。 夫々は本作でのエピソードにも類似する。 「企業文化」は…
昨日から公開開始。 eiga.comですので、タイトル通り原作の紹介記事を再掲載。コロナ禍が始まった2020年初頭に書いた。/そしてタイトル通り、ネタバレの要素はどうしても存在するので、回避したい方はそのようにしてください。 種痘を広めた町医者を描く吉村昭「雪の花」紹介―「人類は、感染症に打ち勝つ」の誓いと、没140年の慰霊を込めて。 今年はとにかくコロナウイルスの年で、当ブログも関連記事がすごく多くなったし新聞やテレビのニュースも、未だにほとんどがこの話題で終始している。今なお予断は許さないものの、 それでも人類は、コロナウイルスを克服する(共存、という言葉を使う人もいるかもしれないがまあど…
フォローしているブロガーさんが紹介していた本。 私の好みに、ぴったり合う本だと感じた。 非常に面白い。 例によって「ネタバレ」をしないように気を付けるので、 本の内容ではなくて、本を読んで感じたことを書く。 最初の1ページを読み始めると 「お、これは、なかなか凄いぞ」と感じられた。 ぐいぐいと、ぐいぐいと引き込まれていく。 面白い。面白い。 次の展開が早く知りたい。 平日は通勤時間中に読むので時間は掛かった。 (それ以外に読書ができる時間が無い) だが、続きが気になって、「早く続きが読みたい」とそればかり考えていた。 本を読めない時間、 例えば、歩いている途中、寝る前なども、この本の内容を、ひ…
雪の花(新潮文庫) 作者:吉村昭 新潮社 Amazon 私は、疱瘡から人をすくいとうございます。 天災と飢饉と疫病が一気に来た福井藩。 なぜに牛糞。 町医者の笠原良策(27or28)。 自然のふしぎが気になる大武了玄は蘭方医。 京の蘭方医大家、日野鼎哉(ひのていさい)に師事。 福井に戻るも毎年天然痘が大流行。 人痘法ではなく、種痘法。 そうだ、福井藩主松平春嶽に頼もう。 2年待ったの! 動いたのは3年後。。話のわかる人を通さんとだめやね、こういうのは。 佐賀藩での成功例。さすが鍋島直正。 良策(40)。 雪山越え。 悪いのは庶民じゃなくて藩。いつの時代も。。 ぜんぜん進まない種痘。 いじめられ…
吉村昭の『星への旅』を読んだ。それについて書く。 文体はやや硬いが、平易で簡潔である。一読してはっきりと意味が取れる箇所ばかりであり、物語も単純に進むため、難しいところはなにもないだろう。これを読んでまったく意味が分からなかったと言う読者はいないと思われる。 本作は若者が集団自殺をする話である。自死にはっきりとした動機はなく、ただうっすらとした閉塞感を出発点として、絶望よりもむしろ希望や好奇心を抱いて彼らは海に身投げをする。生に意味を見出せない彼らは、むしろ死の方に人生の進展があると思うのである。その自死は無邪気であり、彼らのおこなう活動のすべてに透明感がある。こうした透明な雰囲気は、圭一の親…
壮絶な記録文学です。北アルプスの黒部峡谷は、峻厳な地形や豪雪が人の侵入を拒み続けてきた秘境。その峡谷に水力発電のダムを建設するため、人や資材を運ぶ隧道(トンネル)の掘削が始まりました。 ところが地下火山の影響で、掘り進むと岩盤温度は160度を超え、熱湯が絶えず吹き出してトンネル内は灼熱地獄になります。 「高熱隧道」(吉村昭、新潮文庫)は丹念に工事記録を調べ、現場責任者である技師の視点から、自然と人間の闘いを描き出した作品です。 あまりの高温に、発破のダイナマイトが自然発火して、人夫たちは逃げる間もありません。坑道の最深部、バラバラになった肉塊を抱き上げてトロッコ3台に積み、外に出してムシロに並…