小説家。1927年(昭和2年)5月1日-2006年7月31日 東京生まれ。作家の津村節子は妻。 学習院大学国文科中退。長く作家修行をしたが四回芥川賞候補となるも受賞に至らず、『星への旅』で太宰治賞、『戦艦武蔵』で事実上の作家デビューを果たし、『関東大震災』等で菊池寛賞、『破獄』で読売文学賞、『冷い夏、熱い夏』で毎日芸術賞、『天狗争乱』で大佛次郎賞を受賞している。大量の史料や証人に取材した、緻密な文体の記録小説・歴史小説に定評がある。芸術院会員。
江戸時代末期、初めての航海で、わずか十三歳で難破し、アメリカ船に救助された彦蔵の生涯とともに、彼と関わった漂流民たちの顛末を追う展開となります。日本における鎖国政策や攘夷運動、明治維新の開国、そしてアメリカにおける南北戦争と彦蔵の歩く道には、政変の嵐が吹き荒れているようでした。彦蔵はリンカーンをはじめ、アメリカ大統領三代に会い言葉を交わすという類まれな経験をしながら、洗礼を受けアメリカに帰化しながらも、故郷に帰ることをあきらめませんでした。そして、ついに故郷に帰ることが出来たのですが、その姿は、思い出とは似ても似つかぬ姿だったのです。吉村昭にして、この調査は、もっとも困難だったと言うほど、多く…
吉村昭『遠い幻影』 今日は読書の話題です。吉村昭の短編集『遠い幻影』。 吉村昭の作品は、アンソロジーの中の短編が気に入り、長編『仮釈放』を読んで、これが2冊目になる。文庫本で20~30ページほどの短めの短編が12編収録されている。12編中9編が平成に入ってから書かれた作品で、代表作と言われる歴史小説の長編を数多く発表した後、60代後半になってから書かれた作品だ。 ひと言でいうと、リアリズムの極致のような作品が並んでいる。作者が小説を書く上で、影響を受けた作家のひとりが志賀直哉だと言われているが、徹底したリアリズムという点ではそれ以上ではないかと感じた。抑制の効いた文体は読んでいて心地よく、個人…
敵討 (新潮文庫) 著者 : 吉村昭 新潮社 発売日 : 2003-11-28 ブクログでレビューを見る» 吉村昭の中篇時代小説集『敵討』を読みました。吉村昭の作品を読むのは、6年半くらい前に読了した『破獄』以来なので久しぶりですね。-----story-------------賞賛された美風が、明治には殺人罪に……ドラマチックな敵討を描く歴史中篇二篇。美しき犯罪。惨殺された父母の仇を討つ――しかし、ときは明治時代。美風として賞賛された敵討は、一転して殺人罪とされるようになっていた……新時代を迎えた日本人の複雑な心情を描く「最後の仇討」。父と伯父を殺した男は、権勢を誇る幕臣の手先として暗躍して…
☆ 冬期講座は午前中だけ。夜の塾生も昼間に来たから、夜は受験を前にした中学3年生が自習に来ているだけ。 ☆ 仕事がないと拍子抜けなのは、ワーカホリックの症状か。 ★ さて今日は、乃南アサさんの「すずの爪あと」(新潮文庫)から「寝言」と吉村昭さんの「法師蝉」(新潮文庫)から「秋の旅」を読んだ。 ★ どちらも倦怠期の夫婦の話。男性の視線から描かれている。 ★ 「秋の旅」は、企業マンとして役員まで上り詰めた男性が主人公。ここまで出世できたのは、彼を支え続けた妻のおかげなのだが、退職するや、妻は旅行など自らの楽しみに時間を費やしているのが気に食わない。 ★ 家に残された男性は、インスタント食品を食べな…
いやぁ~さすが吉村昭の名作だ。危機迫る圧倒的な迫力と奥深い人間ドラマで読み応えが半端ない。 「高熱隧道」は1967年(昭和42年)に「新潮」5月号で発表された長編作品で、黒部川第三発電所建設工事の過酷な現場を描いた記録文学。 事実を忠実に描くため、かなりの時間を使って取材を行い、当時の労働者の内面的心情まで描かれている。 ダイナマイトで発破をかける隧道トンネルの岩盤の表面温度は165度。火山断層を掘り進める隧道トンネルの先端に行くまでに意識を失いかける人が多く、そもそも作業ができるようなトンネル内部の温度ではない。 また、泡雪崩(ほうなだれ)で頑丈な鉄筋コンクリート5階建ての工事現場の宿舎は1…
☆ 最近のドラマでは「コーチ」が面白い。原作がしっかりしているからだろうか。 ☆ 「イクサガミ」も面白い。明治初頭を舞台に、大金を手に入れるために時代に取り残されたサムライたちが、サバイバルゲームをするというもの。「イカゲーム」と「バトルロワイアル」を時代劇で再現しているという感じだ。 ☆ ユーチューブでは、AIによるフェイクミュージックを楽しんでいる。AIが原曲をメタル風とか、ラテン風とか、ゴスペル風とかアレンジしている。 ☆ 結論からいうと、原曲の良い曲はどうアレンジしても素晴らしい。私はケルト風の「壊れかけのラジオ」など好きだ。 ★ さて今日は、吉村昭さんの「法師蝉」(新潮文庫)から「或…
「飲み友達」「喫煙コーナー」「花火」「受話器」「牛乳瓶」「寒牡丹」「光る干潟」「碇星」の8編が収められた吉村昭の『碇星 いかりぼし』。自伝的な作品と思える3編が含まれる。 帯にある「定年後、あなたはどう生きていきますか」などには興味もなかったが、当時短編集など数冊読んでいた流れで、つい買い置いてしまった。 退職後の生き方には、「束縛の無い自由な生活に満足し、新鮮な日々をすごす」者と、自分の存在意義を失い、「虚脱感に陥る者」の二通りがあるようだと書いている。 ショッピングセンター内の喫煙コーナーで時間を過ごすうちに顔見知りになった3人。背広にネクタイを締めて出かける先が通夜か葬儀であっても、目的…
徳川家康の開幕から明治維新まで、260年と長く続いた徳川の世。その幕末には、“いやでござんすペリーさん”といった語呂合わせで覚えた1853年のペリー浦賀沖への来航があった。 小説の後半は読みこまれた資料の豊富さをほうふつとさせる詳細さで、ペリー来航の背景、日本の開国へと至る事情が記されていく。 漂民救助、石炭等の供給の要求が双方合意の元に妥結したにもかかわらず、ペリーは脅迫ともいえる高圧的な態度を続けた。ペリーに同行した首席通訳官のウィリアムズが著書『ペリー日本遠征随行記』で書き残していることを添えている。 「正義や、節操や、故国も念頭におこうとせず、自分の活動欲を日本に対する彼のあらゆる行為…
(首を飛ばされても、立っている巨大ヒグマ 谷口ジロー画) 熊が世間を脅かしている。テレビでは連日熊の話題で持ちきりだ。はやりに乗ずるわけでもないが、思うことなど。 とくに北海道、東北地方でその出没が続いていて、昼間、街の中心街を走り回るなど、異様な光景であり、人身被害も連日出ている。秋田県の要請で自衛隊が出動し、また警察官がライフル銃を発砲して熊を銃猟する体制が整えられた。 ところが先日、静岡県でも熊が頻繁に出て駆除された報道があり驚いた。県内では初めての駆除である。 場所は富士山のスカイラインにある水が塚駐車場という登山者がよく寄る場所の付近である。夏場はここにマイカーを停め、ここからシャト…
「零式戦闘機」(吉村昭著)を読了。 ジブリ映画「風立ちぬ」の登場人物でもあった堀越二郎さん(零戦の設計技師)にもっぱらフォーカスした本かと思ったら、全般的には零戦を取り巻く大平洋戦争史という感じであった。 無理難題を押し付けられた設計時のエピソードから始まったものの、途中からは零戦活躍史。そして当然敗色濃厚となっていく展開(最後はお約束の特攻・・・)。 直近3年ほど光人社NF文庫を中心に第二次大戦の帝国陸海軍関連書籍を何十冊も目を通しており(読書日記としては殆どブログには記載していない。ここ数年、読書日記としてのペースが落ちているのはそれが原因)、優秀なパイロットの手記も一部の目立ちたがり屋さ…