源氏物語 帚木巻(全十四首) 手を折りて あひ見しことを 数ふれば これひとつやは 君が憂きふし 左馬頭 ⇒ 女<恋人>(贈歌) 【意訳】 あなたと連れ添いし日々を指折り数えてみますと、まこと、これひとつだけがあなたのおつらさであったはずもなく。 ※「やは」は反語表現で、「この一つではない」という意味を含む。 憂きふしを 心ひとつに 数へきて こや君が手を 別るべきをり 女<恋人> ⇒ 左馬頭(返歌) 【意訳】 あなたのつれなさを、わたくしは心ひとつで堪え忍んでまいりました。 けれど今は、こうしてお手を分かつ時なのでございましょうか。 ※相手の詠んだ語句を用いて応答していることは、未練のあらわ…