必殺橋掛人 → 必殺仕事人V激闘編 → 必殺まっしぐら!
人気時代劇「必殺シリーズ」第25弾。第23弾「必殺仕事人V」の続編ではあるが、設定の見直しにより、仕事人の表の職業、殺し道具などが変更となっている。
1985年(昭和60年)11月15日より1986年(昭和61年)7月25日まで全33回にわたって放送された。
企画段階のタイトルは「必殺仕事人VI」。『必殺仕置人』『新必殺仕置人』で念仏の鉄を演じた山崎努氏へ出演要請を行ったが断られている。
『必殺仕事人III』から顕著になった必殺シリーズのバラエティー路線への転向は、ドラマ性の高いハードな初期シリーズから視聴し続けているファンには敬遠されつつも、一般視聴者からは絶大な支持を受け、番組も高視聴率を獲得。世間では「必殺ブーム」を巻き起こし、国民的大ヒット時代劇となっていた。
ところがその人気も『必殺仕事人V』の辺りから陰りを見せ始め、製作側は新たな局面を迎えていた。そこで次作『必殺橋掛人』では、初期シリーズの牽引者の一人である監督・工藤栄一を復帰させ、ドラマ性重視の手堅い作品を作り上げた。その流れを受け登場した主水シリーズが、本作『必殺仕事人V激闘編』である。
本作の最大の特徴として、元締が束ねる仕事人組織「闇の会」の存在が挙げられる。この闇の会は、『新必殺仕置人』に登場した「寅の会」を模したもので、江戸において闇の会の殺しの競りを通した仕事でないと裏稼業が出来ないという鉄の掟を持った組織である。(この組織は、以降のテレビスペシャルや劇場版にも登場している)
もう一つの特徴は、主水たちの仲間に助っ人が登場したこと。元締がいないため、闇の会に出席できず、仕事を貰えない3人の仕事人「壱」「弐」「参」は、従来の主水、加代、竜、政のチームでは手に負えない大物相手の仕置を請け負う「はぐれ仕事人」として、主水たちに関わっていくことになる。
当初は原点回帰のハード路線としてスタートした本作であったが、中盤からは無難なソフト路線に転換していく。「壱」が初登場時に主水配下の目明しとして登場していたりするなど、傑作となる要素を幾つか孕んでいただけに、非常に悔やまれる一本である。
劇中音楽は、平尾昌晃が作曲した音楽の他に、京本政樹、大谷和夫が作曲した音楽が頻繁に使用されている。
尚、本作の後日談的な物語を描いた劇場版『必殺!III 裏か表か』が工藤栄一監督作品として公開されている。
奉行所による仕事人組織撲滅のための取り締まりはますます厳しくなり、今日もまた、仕事人元締・丁字屋半右衛門(山口幸生)が死罪となった。刑場で主水(藤田まこと)の傍を通り過ぎる丁字屋は「いけませんぜ……二度と仕事をなすっちゃあ……」と小声で呟くのだった。
一方、貧乏生活によって身包み一切を金貸しのお仙(赤座美代子)によって奪われた加代は、お金欲しさと裏稼業への欲望から闇の会に出席。呉服橋に住む神尾将監(森次晃嗣)殺しを五十両で引き受ける。
奉行所内の配置転換により、住民の苦情受付係りに転属した主水は、配下である目明しの十一(柴俊夫)と共に、家の間に挟まった猫を助け出したり、地上げ屋と住人とのトラブルを仲裁するなどの閑職に甘んじていた。そこへ加代が仕事を持ちかける。そして、加代が殺しの相手の名前を口にした途端主水の顔色が豹変する。神尾将監とは、何と北町奉行所の奉行で、近く若年寄にもなろうという超大物だったのだ。取り締まりの厳しいご時世に、そんな大物相手の仕事は出来ないと断る主水。
主水に断られた加代は、江戸に戻っていた竜(京本政樹)や、同じく江戸に戻り、花屋から鍛冶屋に転職した政(村上弘明)に仕事を持ちかけるが断られてしまう。
八方塞の加代は仕事料を持ち逃げしようとするが、竜と政に見つかり引き止められる。昼間は怪しいびいどろ売りが周辺を嗅ぎ回っていて、返事が出来なかったのだ。そして、改めて二人は仕事を引き受けるのであった。その頃主水は、眼鏡をかけた怪しいびいどろ売りに裏の仕事のことを探られ、その男が指定した縁日の路地裏にやってきていた。だが、そこにびいどろ売りは来ておらず、芸者風の人物が一人待っていた。その芸者は不気味に微笑み、突然主水に襲い掛かってきたのだ。応戦する主水は芸者風の男の素性を問いただすが、「役者崩れ」とだけ名乗ってその場を去っていった。
今回の仕事が金貸しのお仙の依頼であることを知った加代だったが、あと1日で殺しの期限が過ぎてしまうことから焦っていた。竜と政だけでは力不足で、奉行を仕置することは出来ない。切羽詰まった思いから、加代は闇の会に助けを求め、闇の会の元締が直接主水に参加要請をすることで、主水は仕事人に復帰することとなる。そして、その様子を影から見守っていた人物が主水たちの前に現れた。目明しの十一、主水を襲った役者崩れ、主水たちを探っていた眼鏡をかけたびいどろ売り……この三人はそれぞれ自らを「壱」「弐(梅沢富美男)」「参(笑福亭鶴瓶)」と名乗った。彼らは死罪となった丁字屋半右衛門配下の仕事人であり、元締を失ったことで闇の会にも出席が出来ず、裏の仕事が出来なくなった「はぐれ仕事人」だったのである。この三人は、相手が今回のように手に負えない強大な場合、助っ人として使って欲しいと申し出る。そして早速、今回の神尾将監殺しに参加するのだった。
ヤクザ・紋兵衛(藤岡重慶)の葬式に神尾将監が出席することを知った主水たちは、葬式のスタッフとして潜入する。手練の配下を多数擁する神尾将監を、主水たちは無事仕掛けることが出来るか?
続編に『必殺仕事人V旋風編』がある。