『ドライブ・マイ・カー』『偶然と想像』に続いて濱口竜介は問題作と秀作が一体になった映画を届けてくれた。すなわち令和の大傑作。 この映画を左脳で語るのは愚の骨頂。理屈などいらない。そもそも「悪は存在しない」というタイトルが破綻しているのだから。この世の摂理に反しており、主人公の最後の行動は紛れもなく悪。 今作のタイトルは「悪意は存在しない」が正確だが、「意」を剥ぎ取った濱口竜介の凄さ。意味などいらない、意義などいらない。まさに映画で表現して欲しいこと。 オープニングは信州の雪山を歩く自分の視点そのもの。八ヶ岳に登るとき、いつもアイゼンで雪を噛み、木々を見上げならが歩く。そこは秒針のない時空。濱口…