ある日の昼下り、鶯谷北口で降車するとラブホ街を抜けて左に子規庵、右に書道博物館の道に到った。今回の目的は後者。今までにも幾度となく来る機会はあったはずだが、入館するのは今回が初めて。道すがら、ホテルから出てくる男女、さらには徘徊する中年男と擦過し、客観的には己自身も博物館の観覧者というよりはラブホの利用客に見えてしまうのだろうなと思う。そういえば昔、藤沢周『雨月』の文庫本(2005)を携えて、鶯谷駅の構内でにしんそばを食って悦に入っていたなと不意に思い出す。それから年月が経過し、40代半ばくらいからMと何度か来る機会があった。今やそれも過去となった。 入場料は500円。すぐ後ろにいた男が「いく…