モモは不穏な空気を感じていた。 長年の苦労の果てに辿り着いた場所は、寂れた町の小さなオーケストラだった。 しかし、オーケストラの大小は、モモにとって正直どうでも良かった。 とりあえずどこかのオーケストラに就職するというのが、ずっと縛りつけられていた『夢』へのケジメだったのだから。 しかしそのケジメもまだ道半ばだ。 まだ『夢』は完全な終幕までは至っていない。 モモはあと一年半、試用期間を乗り越え、楽団員の投票で合格を勝ち取ることで初めて、幕引きが出来るのだ。 そしてついに始まった試用期間。 モモにとっては驚きの連続だった。 まず人事担当の人が、ほとんど事務所にいなかった。 合格直後に事務所に連れ…