西條奈加氏の『六つの村を越えて髭をなびかせる者』(PHP研究所、2022年)を読んだ。天明五年(1785年)から同七年(1787年)までの徳川幕府調査隊による蝦夷地探検を、普請役・青島俊蔵の竿取として同行した最上徳内(1754年~1836年)の視点から描いた小説だ。 江戸時代の蝦夷地探検を通訳・最上徳内の視点から描いている 最上徳内は、蝦夷問題の専門家として幕府から重んじられた人物だが、元は出羽国楯岡の百姓の長男。私がこの作品を読んでみたいと思ったのは、徳川幕府調査隊による蝦夷地探検のことを詳しく知りたいということに加えて、山形県出身の最上徳内がどのような人物だったのかに関心があったためだ。た…