朧月夜《おぼろづきよ》の尚侍《ないしのかみ》も 静かな院の中にいて、過去を思う時々に、 源氏とした恋愛の昔が今も身にしむことに思われた。 近ごろでも源氏は好便に託して文通をしているのであった。 太后は政治に御|註文《ちゅうもん》をお持ちになる時とか、 御自身の推薦権の与えられておいでになる 限られた官爵の運用についてとかに思召しの通らない時は、 長生きをして情けない末世に苦しむというようなことを お言い出しになり、御無理も仰せられた。 年を取っておいでになるにしたがって、 強い御気質がますます強くなって 院もお困りになるふうであった。 🌕🎼 滅びの墓 written by いまたく 少納言のホ…