橋本俶子さんはうちのご近所にお住まいのご婦人で、うちがむかし焼菓子の実店舗を営んでいたころは、よくミニパウンドの詰合せを買いにお越しくださったのだった。柔和で明るく率直なお人柄のうちにも、何か確固とした信念のようなものを感じさせる、素敵な方だった。 その橋本さんが90歳をこえて、はじめての歌集を出されたと知れば、どうして読まずにいられようか。 心に残る歌をいくつか書きとめてみたいと思う。 鋭角を重ねて平和の鶴を折る平和は鋭き形かもしれぬ 平和というのは何かふわふわして柔らかいもののような気がしていたから、「平和は鋭き形」には意表を突かれた。戦争という鋭角的な暴力に対抗するためには、平和への希求…