今週のお題「うるおい」 いやに目がかすむと思ったら、瞬きをしていなかった。 まぶたをギューと閉じ合わせる。 目が忘れていた涙の栓を慌てて抜くものだから、涙が目の端から落ちてしまった。 そのままの姿勢で数秒、瞳全体に涙が行き渡るのを待つ。 瞬きを忘れていたのは、携帯電話を見ていたから。 特別に目を惹くものがあったわけではない。 他人の不幸や妬み、嘆きを見るともなく眺めていたらいつの間にか時間が経っていた。 心には乾いた砂粒が散らばっているだけ。 本棚に目をやると茨木のり子の文字が見えた。 詩集をぱらぱら開く。 一つの詩が目に留まる。 ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな みずから水やり…