川越で、昔大きな火事があったときの話にゃ。 炎が町をどんどん舐め尽くしていく中、蓮馨寺(れんけいじ)の鐘が突然鳴り出したんだそうにゃ。 見ると、ひとりのお坊さんが鐘楼にいて、しきりと鐘を撞いてるんよ。片肌を脱ぎ、衣の裾もはだけ、それはすごい勢いにゃ。 逃げようとしていた近所のみんなは、これを見てびっくり。 「誰だろう。住職でもない。見かける顔でもない。遠くの人にも火事を知らせようと、鐘を打ち鳴らしているにちがいないが、ここにももう火の手が迫っている。お坊さん、あなたも早く逃げなさい!」 遠くから叫んだそうにゃ。 ところが、お坊さんは鐘を撞くのを一向にやめようとしないんよ。ゴーン、ゴーン、と、い…