さすがに額谷は深山幽谷とは参らない、依って紅葉狩りはやはり望むべくもない。 微かに色付く気配は在るにはあるのだが何処なくくすんだ色合いで此ればかりは残念至極に思う。 遥か彼方のあの稜線の辺りまで遡行が叶えば恐らく秘境が展開されようことに、せめて御廟谷までは参ってみたいが所詮敵わぬ夢となり果てました。 庇の下に身を置いて毎度毎度の奇行を此の奇人は今日も独りたわむる。 素足の足元に寄り添って呉れたモンクロシャチホコもムカデも赤トンボもカメムシたちも挙って虫隠れて戸を塞いでしまったようだ。 昆虫たちは冬の巣篭りで身を隠し給うた,それをむかしの人たちは二十四節気七十二候に因んで「蟄虫坏戸(ちつちゅうは…