その日、美里がフラワ-ショップの店番をしていたのには少々訳があった。 母が急用で外出しなければならず、しかもアルバイトの人の都合がつかなかったので、急遽美里が駆り出されたという訳だった。幸いにも今日の授業は午前中だけだったので、昼過ぎには店に出ることが出来た。 その男が店に入ってきたとき、美里は先客の相手をしていたのだが、その客が帰った後、その男を見てドキッと胸が締め付けられるほど、鼓動が高まるのを感じた。 黒のニットカーディガンを白のTシャツの上に着て、下はオリ―ブ色のチノパンツという、どこかのファッション雑誌から抜け出ていた様な、あるいはマネキン買いをしたような男の姿にちょっと圧倒されたの…