介護の現場で働いていると、毎日さまざまな人の「ケア」と向き合う機会があります。 それは誰かをケアするということでもあり、同時に、誰かがケアを受け取るということでもあります。 しかし「ケアを受け取る」というのは、言葉で言うほど簡単ではないことも多いのです。 介護士として長く現場に立ってきた私は、何度も思いました。 「どうしてこの方は、こんなにもこちらのケアを拒むのだろう?」 「私たちは助けたいと思っているのに、なぜそれが伝わらないのだろう?」 そんな疑問を抱えるたびに、ケアとは一方通行では成り立たないものだということを、痛感するのです。 「ありがとう」が言えない人 ある日、90代の女性の入居者様…